その10:1年生の初めての実習指導 実習指導者との打ち合わせ内容④

看護教員にこの実習指導の実際

看護実習の指導の準備。1年生は念入りに。

今回、指導者さんとの打ち合わせ内容の、

  • 初めての担当患者さんは、会話できる方が理想。
  • 教員の実習スケジュールを、指導者さんも把握する。

について、お伝えしたいと思います。

学生が安全に、様々な学びを実習で得るためには、準備が重要です。

私が大事だな、と思っていることの1つひとつが、

私自身の失敗や、体験に基づいたものです。

私が大事だと考えている以外にも、必要なことはあるかもしれませんが。

私の気づきを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。

学生さんも大歓迎です。

1年生の初めての実習指導 実習指導者さんとの打ち合わせ内容

初めての担当患者さんは、会話ができる方が理想。

私が30年前に看護学生だった時、初めて担当した患者さんは、肝臓がんの患者さんでした。

終末期に近く、腹水が著明で、呼吸をするのも、体を動かすのも辛そうでした。

寡黙な患者さんでしたが、私は、患者さんが会話をすることでさえも苦痛なのではないかと思い、

辛そうにしている患者さんのところに行くのが怖くて、

患者さんの顔色をうかがい、いつもナースステーションにいるような学生でした。

30年近く前の事ですが、今でも覚えていますし、後悔しています。

何で患者さんの側にいてあげなかったんだろうって。

体をさすったり、安楽な体位を整えたり、足浴したり。

今だったら、色々とやりたい「看護」が思いつくのに。

なぜ、勇気をだして、「何が一番お辛いですか。」と、

声をかけられなかったのだろう。会話ができなかったのだろう。

30年前の私は、患者さんのところに行くのが怖かったし、

「怖い」と思ってしまっていることを、

患者さんとの会話がままならないことを、誰にも相談できずにいました。

祖父母がいて、両親がいて、3人兄弟、7人家族だった私でも、

病状が重い患者さんの考えていることが想像できず、まったく関わることができていませんでした。

いまは、昔と違って、様々な生活スタイルや家族の形があります。患者さんの生き方も多様です。

学生の家族も、核家族であったり、一人親であったり、兄弟夫婦と生活していたり。

様々な家族の形のなかで学生は生活していますが、

学生は「今を生きる」自分に精一杯です。

(若者は、皆そうだと思いますが。)

学生は、高齢の方々(高齢な方でなかったとしても)の人生や生活、

多様な生き方に思いをよせるということが難しいです。

ベテランの看護師さんにもなると、ベッドサイドに置いてある写真やカレンダー、

手帳や雑誌、几帳面に整理されている状況から。

また、何気ない患者さんのと会話の中から、患者さんの価値観や信念、

その患者さんの人生、思いを、察することができるかもしれません。

しかし、学生は、患者さんと会話をしていたとしていても、看護師さんと同じように、

患者さんの言葉に込められた、患者さんの何十年分もの人生の重みや、

患者さんの価値観を理解するのは、とても難しいです。

それはそうです。

学生の人生経験は、20年ほどですから。

私がいつも指導者さんにお願いしていることは、

「会話ができる患者さんを、1年生に担当させてほしい。」ということです。

看護が必要な方は、どんな人で、どんな思いで療養しているのか。

まずは、会話でのコミュニケ―ションをしっかりと取り、

患者さんと向き合う姿勢を培ってほしいと、考えています。

最初から、言語的コミュニケーションだけでなく、非言語的コミュニケーションも駆使して、

患者さんを理解してほしいと、そんな高度な事を求めているわけではないのです。

学生が、

あなたの辛い事は何ですか。

その辛いことに寄り添いたいんです。

私に何かできることはありませんか。

と、つらい思いをされている患者さんを目の前にしたときに、

患者さんとしっかり向き合って、自分の思いを伝えられる学生に成長してほしいのです。

患者さんの思いを理解しようと、患者さんのために勇気を出せる学生になってほしい。

30年前の私のように、患者さんと向き合うのが怖くて、

言い訳をしながら、ナースステーションにいるような看護学生になってほしくない。

そんな私のねがいもあります。

もちろん、患者さんとの会話がかみ合わなかったり、

時には「来ないでほしい。」と言われてしまったり、

「孫のようだ」と、患者さんにかわいがられたり。

患者さんとの様々な出会いやコミュニケーションが生まれると思うのですが。

うまくいったこと、いかなかったこと。

嬉しかったこと、辛かったこと。

悲しかったこと、悔しかったことを。

自分だけで抱え込むのではなく、実習グループ全員で共有して、

みんなで、その患者さんにとって必要な、大切なコミュニケーションを考えられれば。

そして、何か一つでも、患者さんとの関わりに活かすことができれば。

それが、その学生の財産になり、

その学生が大切にしたい「看護」につながっていくと思います。

教員の実習スケジュールを、指導者さんも把握する。

実習指導者さんの中には、経験が豊かな方もいれば、今回が初めてという方もいます。

今回が初めての実習指導者さんと打ち合わせをすると、

「学校の先生って、学生が夏休みの時、何をしているんですか。先生方も夏休みですか?夜勤もなくて、いいですね。」

と、必ず言われます。

答えは、NOです。誤解があります。

しっかりと、普通に学生の夏休み中も働いています。

そして、夜勤はありませんが、持ち帰りの仕事がたくさんあります。(泣)

看護教員の仕事を、きちんと理解されている看護師さんや指導者さんは、ほぼいません。

なので、看護師さんや、指導者さんは、学生が実習中にトラブルを起こしても、

「連絡をすれば、暇な先生がすぐに駆け付けてくれる。」と、思われているふしがあります。

でも、答えは、NOです。暇な先生はいません。

私の場合は、3年の実習生を6名指導担当していたとしても、3年生全体の担任でしたから、出欠状況の確認や、様々な連絡事項などのやりとりをしたり。

ホームルームの運営や、自治会とのやり取りもしていました。

また、保健担当でもあったので、全校生200名ほどの健康診断や予防接種状況の把握、健康状態に問題がありそうな学生のフォローなどもしていました。

また、講義も複数担当していたので、1・2年生に90分授業を1日に2回実施したり。

合間をぬって、会議に参加したり。

その上で、実習指導に病院施設にいっていました。

なので、授業中に、実習場から連絡が来ることもたびたびあり。

これは、きちんと臨床の看護師さんや指導者さんに理解してもらわないと、

本当に大変な事態になった時に、誰も対応ができない、と危機感を覚えた次第です。

(時には、誰も手が離せる人がいなくて、副校長に臨床まで行ってもらったこともあったりしました。)

私の場合、自分の勤務状況だけでなく(日勤、遅番、早番など)、

何時から何時まで実習場に行けるのか、スケージュール表を指導者さんや病棟の科長さんに、

お渡ししていました。

また、実習グループのリーダーにもスケジュール表を渡し、何か報告・連絡・相談があるときには、

緊急性を指導者さんと相談しながら行動するように指示していました。

このようなやりとりをするようになってから、授業中に呼び出されることがなくなりました。(笑)

学生に、教員をうまく活用して、患者さんに実施したい看護を考えてください。

と、いったら。

次の日には、私のスケジュールをうまく活用してくださり。

私は、学生の患者さんの足浴を3回続けて、見守ることになりました。(笑)

まとめ

今回は、指導者さんとの打ち合わせ内容の

  • 初めての担当患者さんは、会話できる方が理想。
  • 教員の実習スケジュールを、指導者さんも把握する。

の解説をしました。

これで、終了予定でしたが、肝心の「学生個々の状況についての共有」

について、解説が抜けていました。次回、解説したいと思います。

とにかく、大事なのは準備です。

学生がのびのびと実習できるための環境づくり、支援をしたいですね。

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