その16:1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容⑤

看護教員にこの実習指導の実際

教員歴10年のにこが実施している、1年生へのオリエンテーション内容をお伝えします。

「1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容

について、シリーズで解説しています。

基本設定は、

基礎看護学実習1(7日間)

実習目標:看護の対象を理解し、看護の実際を知る

実習内容:担当する患者さんとのコミュニケーション

     看護師と共に、看護援助を体験する

とします。

学生へのオリエンテーション内容(解説内容)は、以下を予定しています。

今回は、番目です。

  1. 「私の実習目標」と「事前学習」の確認と返却
  2. 教員の自己紹介
  3. 学生の自己紹介
  4. グループリーダーとサブリーダーをどのように決めたのか確認
  5. 学生個々の実習目標と学習内容の発表
  6. 学生の目標と学習内容に関する意見交換
  7. 教員にしてもらいたいオリエンテーション内容
  8. 教員からのオリエンテーション
  9. 実習初日の予定を計画する
  10. 「私の実習目標」と「事前学習」の再提出
  11. 技術練習について
  12. グループの合言葉の確認

追加もあり得ます。(笑)

なお、それぞれの看護学校や大学によって、

また、先生方の考え方によって、

オリエンテーション内容や方法は様々だと思います。

これは、教員にこが、10年間オリエンテーションを続けてきた中での、

私なりの工夫が盛り込まれているものです。

私自身の失敗や、体験に基づいたものなので、

参考までに、ということで、お願いいたします。

私が大事だと考えている以外にも、必要なことがあるかもしれませんが。

私の気づきを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。

学生個々の実習目標と学習内容の発表

基礎看護学1の実習目標は、「看護の対象を理解し、看護の実際を知る」でした。

ここでいう、「学生個々の実習目標」とは、学生一人ひとりが、

自分の成長や実習目標達成のための具体的な目標を立てようということです。

「看護の対象を理解し、看護の実際を知る」の目標は、

抽象的過ぎて、他人事のように感じませんか。

私が皆さんにお伝えしたい目標設定とは、学生が自分にとっての明確な意義や目的を持ち、

それを叶えるための具体的な目標を立てることです。

明確な目標を立てることで、目標達成のために学生自身ががすべきことを具体的にしていくことができます。

つまり、実習のために必要な学習内容を決めることができます。

また、目標設定を行うことで自分の現状を把握し、

目標達成へ向けた確実な努力を積み重ねやすくなります。

目標設定の効果4つ

実習に限りませんが、明確な目標設定を行うことで具体的な効果が期待できます。

ここでは目標設定の効果4つを紹介したいと思います。

目標設定の効果1:課題や成果を見える化できる

目標設定を行うことで自分の課題や成果を見える化することができます。

実習ファイルなど、自分の目に付くところに目標設定シートをファイリングしておけば、常に目標達成を意識して実習に取り組むことができます。

また、看護師さんや実習指導者さん、教員やグループメンバーに、自分の目標をわかりやすく伝えられるようになるため、実習最終日の評価にも役立つ資料になります。

目標設定の効果2:モチベーションを維持できる

目標設定をして努力をするプロセスが、実習のモチベーションの維持につながります。

目標を達成するための学習や計画が進んでいけば、さらにやる気の向上が見込めます。

また、今回の実習の目標達成後も、つぎの実習に向けた意欲を維持することにつながります。

目標設定の効果3:学習や計画実践の効率が上がる

目標設定を行うことで明確なゴールを目指すことができるようになるため、学習や計画実践の効率が上がります。

人は自分がすべきことがわかると行動力が上がります。

また、正しい目標設定が行われることにより、学習や計画の進捗状況から現在の達成度がわかるようになるため、目標達成まであとどのくらいなのか自分の現在地が把握できるようになります。

そのため、モチベーションを向上させて実習に取り組むことができます。

目標設定の効果4:成長を実感できる

目標設定を行い、目標達成を繰り返すことで、自信や成長に繋がります。

自分で立てた目標を達成するために自ら努力することで、実習に前向きな気持ちで取り組めるようになります。

また、目標への達成度も自分で把握できるため、身につけた知識・技術や経験が自信に繋がって目標達成の可能性を高めます。

さらに目標を達成することにより、より大きな自信を持つことができます。

目標設定のコツ4つ

ここまで目標設定を行うことによってさまざまな効果が得られることを紹介しましたが。

目標を設定する場合にはいくつかのコツがあります。

目標設定のコツ1:細かく目標を設定する

目標設定を行う場合、現実的な数字や期限を設定して細かい目標を立てるのがコツです。

基礎看護学実習1は、「7日間」の設定でした。

また実習目標は、「看護の対象を理解し、看護の実際を知る」です。

学生が自分の課題をどのように捉えているかにもよりますが、

私は、ヘンダーソンの14の基本的欲求について、頑張って学習しました。

学んだことを対象理解に役立てたいです。

私は、自分に自信がなくて、いつも、おとなしいねって言われます。

実習では、患者さんと積極的にお話して、どんな人生を歩まれてきた方なのか。

どのような思いで療養されているのか知りたいです。

私は不器用です。

バイタルサイン測定の技術試験で、正確な血圧の値を読み取ることができませんでした。

練習して、自分の力で患者さんの血圧などの身体面の情報をとりたいです。

など、学生の頑張っていること、課題にしていることを大事した細かい目標でもいいと思います。

7日間という短い実習期間なので、教員としては、達成可能な目標を助言できるといいのではないでしょうか。

合わせて具体的な学習計画を立てるのも、1つのコツといえます。

目標設定のコツ2:目標の数を決める

目標設定を行う場合、達成したい目標の数を絞るのがコツです。

今回の実習目標は、「看護の対象を理解し、看護の実際を知る」です。

初めての実習なので、

  1. 看護の対象を理解する
  2. 看護の実際を知る

の2点について、学生は自己目標を具体的に立てられれば良いのではないかと思います。

学生の目標案

  1. 生活構造とライフサイクルの視点で患者さんを生活者として理解する。
  2. 看護師が行っている援助を体験させてもらう。援助を実施する看護師さんの思いや援助を受けた患者さんの思いを知る中で、看護とは何かを考えまとめる。

達成したい目標を欲張ると、学生の関心や集中が分散してしまうため、目標を達成しにくくなってしまいます。

また、学びも浅くなってしまいます。

実習目標に沿った、重要な目標に絞りましょう。

目標設定のコツ3:モチベーションが上がる目標にする

目標設定を行う場合、自分のモチベーションが上がる目標にするのがコツです。

自分が得意なことを取り入れたり、興味関心が高いことを取り入れることも一つです。

また、今は苦手だけど、実習で頑張っておけば今後も役に立つような、

達成するメリットがあるものを設定するのも一つです。

ただ、苦手なものは、目標達成の成功率も下がってしまうため、自分の興味があり、達成する意欲が湧くような目標を設定するのがコツといえます。

(コツ1の学生たちが言っているような目標だと、やりがいがありそうです。)

目標設定のコツ4:実行する

目標が決まったら、あとは目標達成のために計画的に実行するのがコツです。

学習内容の確認

学生個々の目標が定まったら、その目標が達成できるように、学習内容を計画するよう指示します。

すでに目標が練られているので、学習内容についてはさほど悩む学生はいません。

ただ、実習なので、知識を身につけるだけでなく、技術も身につける必要があります。

技術練習は必須です。

学習習慣がない学生や、学習の仕方がわからない学生も多いので、その点については、丁寧にやり取りをする必要があります。(怠けないように。)

学生個々の実習目標と学習内容の発表

教員にこと学生とのやり取りは、実習開始3週間前から始まります。

  • 実習開始3週間前:実習リーダーが教員にこに挨拶に来る。1週間後に実習目標用紙と事前学習を教員に提出するよう指示する。
  • 実習開始2週間前:学生は実習目標用紙と事前学習を教員にこに提出する。教員は内容を確認する。
  • 実習開始10日前:教員は実習メンバー全員を集め、実習目標用紙と事前学習について、全体に助言する。必要があれば個別指導、再提出を求める。
  • 実習開始1週間前:再度実習メンバー全員を集める。学生一人ひとりに実習目標を発表してもらう。学生個々の目標に対して、メンバー全員で意見交換する。また、学習内容について助言し合う。
  • 実習3日前:学生は追加した学習内容を教員に提出する。教員は学習内容を確認し、すぐ返却する。
  • 実習前日:最終オリエンテーション。

学生個々の実習目標と学習内容の発表をすると、一人ひとりの学生がどんな実習をしたいと思っているのか。

何が強みで何が弱みなのか。

どんな課題に取り組もうとしているのか。

メンバー内で共有することができます。

実習開始3週間前からこのようなやりとりを開始しているので、

実習グループ内での関係性も、深まっていきます。

まとめ

目標は高すぎても低すぎても意味がありません。

自分の理想を優先して高い目標を立てたとしても、それだけ達成することが難しくなります。

逆に、目標が低過ぎてもモチベーションにつながらない可能性があります。

目標自体には強制力がないため、なかなか自主的に行動に移すのは難しいですが。

グループ全員の関係性が構築できるよう、「3週間」という時間をかけたり。

実習グループ全員で目標が達成できるよう、発表し合って「共有する」仕掛けをつくったり。

また、「こんな看護師になりたい」という将来の自分の姿をしっかりイメージすることにより、モチベーションをアップさせることができます。

また、将来の自分の姿をリアルに思い描くことにより、目標達成のために行動を起こしやすくなります。

具体的な目標を立てて、目標達成までの期限を決めて取り組んだとしても、目標達成に至らないこともありますが。

そういった場合は学生とともに振り返り、分析し修正を必ず行う必要があります。

とにかく、初めての実習です。

一つひとつが初めてのことなので、目標ひとつ、計画ひとつ、最初はうまくいきません。

でも、「ここで先生の言う通りにしてごらん。」ではなく、

学生が自分で考えて、自分で出した目標や計画は、

成功しても失敗したとしても、学生は納得します。

時間はかかりますが、最初が肝心です。

先生に言われたから、ではなく。

学生が自分で決めた目標、計画で実習に臨めるように支援したいですね。

次回は、「学生の目標と学習内容に関する意見交換」についてもう少し深く解説します。

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