悪性リンパ腫患者の看護計画

看護計画(疾患別)

看護問題 例1 突然の発病により入院治療を余儀なくされたことで、不安と社会的役割の中断に伴う苦悩がある。

Aさんは、職場での自らの責任を果たせないことの悔しさと、家族に迷惑をかけていると申し訳なく思う気持ち、病状に対する不安を抱えています。2日後の化学療法開始にあたっては、こういった心理状況に影響されずに、治療に専念できるよう支援する必要があります。

看護目標(期待される結果)

  • 長期目標:今後も安心して治療に専念できる。 (評価予定日:退院日)
  • 短期目標1:病状に対する不安た恐怖を表出することができる。(評価予定日:入院5日目)
  • 短期目標2:同僚や家族に対する、自分を責めるようんあ感情尾を排除できる(評価予定日:入院5日目)

看護計画

観察計画(OP)

  1. 悪性リンパ腫患者である自分をどのように受け止めているのか。
  2. 表情や自らの病状に対する言動。
  3. 仕事や家族に関係する言動。
  4. 面会者や他の患者との会話の様子・内容。
  5. 医師からの病状に関する説明の理解度。

援助計画(CP)

  1. 一日1回は、個室で話をする機会をもち、素直な感情を表出できる場を設け、共感的な態度で話を聴く。
  2. Aさんの気持ちを家族に伝える。
  3. Aさんの希望があれば、カウンセラーやソーシャルワーカーなど相談窓口を紹介する。
  4. 家族にAさんの好きな花の写真をもってきてもらう。

教育計画(EP)

  1. 治療のスケジュールを伝える。
  2. いつでも話を聴くことを伝える。
  3. 患者会などを紹介する。

実施・評価(例)

Aさんと個室での対話を続けた結果、他者を気にすることなく、不安や疑問をより率直に表出することができるようになった。また、Aさんンお好きな花々の写真によって、癒しを得ると同時に、「絶対元気になって、また写真を撮りに行きたい」と将来に対する希望を見出すことができた。

今後は、治療による副作用でつらい時期に入ることから、より注意深い観察を行い、セルフケアができる環境を提供する。

評価日:治療開始4日目

看護問題 例2 化学療法に対する不安があり、闘病意欲が低下するおそれがある。

Aさんはこれから始まる治療に伴って生じる脱毛や悪心・嘔吐と言った副作用を心配しています。また、悪性リンパ腫に関する情報収集に励んでいますが治療の副作用や再発などの不安を増強させるような情報により、闘病意欲が低下するおそれがあります。そこで、治療に前向きに望むことができるよう支援が必要となります。

看護目標(期待される結果)

  • 長期目標:「治るんだ」と信じて闘病することができる。 (評価予定日:退院日)
  • 短期目標:脱毛や悪心・嘔吐に対する不安が軽減し、自ら対処行動がとれるようになる。(評価予定日:治療開始10日目)

看護計画

観察計画(OP)

  1. 治療に対するAさんの言葉
  2. 食事施主の状況(食事内容、摂取量、食べ方)
  3. 悪心・嘔吐の有無
  4. 口腔粘膜の保積、腫脹、出血などの口内炎の徴候と、それらによる食事への影響
  5. 脱毛の有無と程度
  6. 血液検査データ(TP、Alb)

援助計画(CP)

1.指示に基づき、早期に制吐薬を使用する。
2.起床時、毎食後、就寝前の濃く食うケアを徹底する。
3.病院食の調整を行う。
・Aさんの食べたい食品、食べられそうな食品を確認し、献立を調整してもらう。
・Aさんから希望があれば、口当たりの良い栄養補助食品を補食として提供する。
4.脱毛は、化学療法開始後2~3週間で始まることを説明し、事前に髪を短めに切るなどの対処方法を提案する。

教育計画(EP)

  1. 口腔ケアの方法を指導する。(血小板の値を確認しながら、歯磨きや含嗽など口腔ケアの方法と物品を工夫し、口腔内を清潔に保つ。起床時、毎食後、就寝前に口腔ケアを行う。)
  2. 食べやすい食品(果物、麺類、酢の物など)や、栄養価の高い食品(ヨーグルト、温泉卵など)を紹介する。
  3. 日中の活動量を維持するよう指導する。
  4. 頭皮の経穴を保ち、髪を短く切りそろえておくと、脱毛を生じた際の手入れがしやすいことを伝える。
  5. 医療用ウイッグ(かつら)のレンタル制度の紹介や、帽子の着用を勧める。

実施・評価(例)

悪心は出現したものの嘔吐することなく、口内炎も発生せずに1クール目の投与が終了した。食事に際しては、「さっぱりしたものが食べたい」というAさんの希望に沿って献立を工夫したことで食事摂取量もある程度維持でき、栄養状態が悪化することはなかった。

今後も治療を続けることで脱毛は避けられないが、髪を切り、脱毛した際にかぶる帽子を準備するなど、自ら対処行動をとることができている。

評価日:治療開始7日目

看護問題 例3 インフュージョンリアクションや出血性膀胱炎と言った副作用が出現するおそれがある。

R-CHOP両方の開始当初にはインフュージョンリアクションや出血性膀胱炎が生じるおそれがあります。そこで、短期目標としてこれらの症状を防ぎ、その後の治療へつなげる必要があります。

看護目標(期待される結果)

  • 短期目標1:インフュージョンリアクションが出現しない。(評価予定日:治療開始3日目)
  • 短期目標2:出血性膀胱炎を起こさずに、1クール目の投与が終了する。(評価予定日:治療開始3日目)

看護計画

観察計画(OP)

  1. バイタルサインの変化(脈拍数、血圧、SpO2、体温、モニター心電計の波形)
  2. 悪寒の有無
  3. 鼻閉・鼻汁の有無
  4. 咽頭違和感の有無
  5. 掻痒感・発疹の有無
  6. 尿量、尿の性状、血尿の有無

援助計画(CP)

  1. 指示に基づき、抗ヒスタミン薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用する。
  2. リツキシマブの投与速度を指示に従って調節する。
  3. 尿量を確保するため、十分な水分摂取を促す。

教育計画(EP)

1.インフュージョンリアクションや出血性膀胱炎の症状について事前に説明し、異常を感じたらすぐに報告するよう説明する。

実施・評価(例)

モニター心電計を装着し、バイタルサインの変化に注意しながら投与を行うことで、異常の早期八卦ンに努め、有害な副作用が出現することなく1日目の投与が終了した。また、お茶などで水分摂取に努めたため、2L/日以上の排尿があり、出血性膀胱炎の発症が予防できた。

評価日:治療開始3日目

看護問題 例4 骨髄抑制による血小板の減少から、出血のおそれがある。

血小板の減少は大量出血を引き起こし、生命の危機にもつながります。そこで、Aさん自身が出血予防の行動を実践できることが求められます。

看護目標(期待される結果)

  • 長期目標:重篤な出血がなく退院することができる。(評価予定日:退院日)
  • 短期目標:出血に注意して行動(転倒予防、外傷予防、排便コントロール)ができる。(評価予定日:治療開始22日目)

看護計画

観察計画(OP)

  1. バイタルサイン(脈拍数、血圧)
  2. 治療内容と経過日数
  3. 血液検査データ(Hb、Pltなど)
  4. 月経の状況(次回の月経予定日、不正性器出血の有無)
  5. 出血予防行動をとれているか(鋭利な物を使用していないか、起居動作や歩行は安全に行えているか、転倒予防のためにゆっくり手すりを使って行動できているか、ベッド柵などの安全対策をとっているか)
  6. 排便の状況(緩下薬を正しく服薬できているか)

援助計画(CP)

  1. 環境調整を行い、危険物を排除する。
  2. 転倒・外傷に注意した行動をとるように説明する。(口腔ケア物品では柔らかい歯ブラシを使用する、転倒しないための履物の選択をする)
  3. 下肢の筋力低下を予防する。(通行人の少ない時間帯に病棟の廊下を歩行して活動量を保持する、病室内で立ち上がり動作を繰り返し行う、エアロバイクを使用する)
  4. 便秘予防のため、水分施主と緩下薬の定期的な服薬を促す。

教育計画(EP)

1.出血徴候に自分で気づくことができるよう指導する。
・点状出血・紫斑の見つけ方
・排泄物の色(血尿、血便)の確認
・出血しやすい部位

2.出血予防について説明する
・鋭利なものの使用を避ける
・柔らかい歯ブラシを使う
・身体を締め付けるような衣類の着用を避ける
・身体を洗うときには、柔らかいタオルを使用し、強くこすらない
・転倒・転落、頭部の打撲に注意してゆっくり安全に行動する

実施・評価(例)

転倒予防のための環境調整や、下肢の筋力低下を防止すること、ゆっくり行動するといった指導を守り、頭部を打撲することなく経過した。特に、排便コントロールにより、肛門からの出血を予防することができた。退院後は活動範囲が広がることも考慮し、取穴防止のためのセルフケアが継続できるように援助する。

評価日:治療開始22日目

基本的な看護問題とそれに対する標準的看護計画

症状に関連して生じやすい看護問題と実施する看護ケア

  1. 発熱による体力の消耗があり、ADLに支障が生じるおそれがある。 ➡ 解熱薬や冷罨法により解熱に努め、体力の消耗を最小限にとどめる。
  2. リンパ球の異常により免疫機能が低下するおそれがある。 ➡ 手洗い、含嗽、マスクの着用など、感染予防の方法を指導する。
  3. 頚部リンパ節の腫脹により、気道閉塞や嚥下障害が出現するおそれがある。 ➡ 呼吸状態や嚥下状態を観察し、状態の急変に備える。
  4. 腫瘍細胞の中枢神経への浸潤により、麻痺や意識障害が出現するおそれがある。 ➡ 意識レベルや神経麻痺の有無に注意して観察し、異常の早期発見に努める。

検査・診断に関連して生じやすい看護問題と実施する看護ケア

  1. 検査結果に対する不安から、闘病意欲が低下するおそれがある。 ➡ 患者の表情や行動を観察し、訴えを傾聴することで不安の解消を図る。
  2. 採血や骨髄穿刺と言った疼痛を伴う検査について恐怖心を抱くおそれがある。 ➡ 苦痛を軽減できるよう事前の準備を整え短時間で検査を終了できるように努める。
  3. 悪性リンパ腫という診断に対する不安・恐怖がある。 ➡ 症状に対する正しい知識が得られるよう、医師から説明してもらう。必要時は説明内容を補足する。患者の不安な気持ちを傾聴し、疾患を受容し、闘病できるよう支援する。

治療・予後に関連して生じやすい看護問題と実施する看護ケア

  1. 化学療法時(抗がん薬投与中)の、悪心・嘔吐をはじめとする有害反応に対する不安がある ➡ バイタルサインをチェックし、異常(アナフィラキシー症状やインフュージョンリアクション)の早期発見に努める。悪心の出現を予測して制吐薬を使用する。環境調整(換気、臭気の除去など)を行う。
  2. 治療のクール中に生じる副作用に対する不安がある。 ➡ 治療計画や副作用の出現時期を説明するとともに、副作用の予防(悪心・嘔吐に対しては制吐薬を効果的に使用する、骨髄抑制に対しては感染予防と外傷予防を行う)に努める。
  3. 予定していた治療ができなくなることに対する不安がある。
  4. 再発や、治療が効かなくなるなど、予後に対する不安がある。 ➡ 病状と今後の治療予定について、医師から説明を受けられるよう調整する。必要時は説明内容の補足をする。患者の言動を観察して病状に対する不安を受け止め、心身の安寧が得られるように支援する。

最後に

看護計画の立案って、とっても大変!基本の計画を活用しよう!

実習で接することのできるわずかな時間の中で、患者さんを理解し、患者さんの状況や特性をとらえ、「情報収集」、「アセスメント」、「看護診断」、「看護計画立案」するのは至難の業です。睡眠時間が削られ、心身共にボロボロ、早く週末が来ないかな、、、という学生さんの気持ち、よくわかります。でも、悪性リンパ腫の治療は長期にわたるため、患者さんやそのご家族も、必死に疾患や治療について勉強し、闘病されています。

教員にこ
教員にこ

実習で患者さんに集中して関わるためにも、計画の立案に時間をかけすぎず、賢く時短しちゃいましょう。「基本の看護計画」を上手に応用して、患者さんに合わせた計画を立案し、実践に集中しましょう。実践からの学びは貴重です。多くの学びが得られ、充実した実習につながり(実習評価につながり)、自己成長の機会となります。疲れ切ってしまう前に、活用してくださいね。また、実践から看護計画を修正していきましょう。

なお、解剖生理、疾患、看護の基礎知識や患者さんの看護に必要な知識、技術は休日などにしっかりと学習しましょうね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました