カーテンを少し開けておくことの意味(奥が深い環境整備)

新人看護師・看護学生にもできる優しい援助
実は奥が深い環境整備。侮っていませんか?

看護学校で一番はじめに習う技術が環境整備。患者さんのベッド周りをきれいに整理整頓して、環境清拭用クロスで拭きとって、リネン類を整えて。患者さんの私物をもとの位置に戻したら終了。ナースコールのセッティングも忘れずに。環境整備が終了したことを患者さんに告げて、つぎの部屋へ・・・。

流れ作業のように次から次へとこなしているように見える看護技術かもしれません。でも、実はすごく奥が深いのです。

「環境整備は実習に来た学生さんにまかせておいて。学生さんでもできるでしょ?」なんて思っていませんか?

私は、看護師の時、学生さんに環境整備をまかせた後も、必ず確認に行くようにしていました。環境整備と言えど、看護技術です。そして、看護の責任者は看護師である私自身です。患者さんの安全・安心・安楽をしっかりと守っていきたいですよね。それは、こんな出来事があったからなんです。

エピソード:ベッド周囲のカーテンを10cm開けていることの意味

50代の心不全のBさんを受け持った時のことです。

Bさんは大部屋で療養されていましたが、神経質なところがあり、常にベッド周囲はカーテンで覆われたままでした。環境整備のためベッド周囲を拭かせてもらうときも、カーテンの外から声をかけ、許可を得てから中に入り、「これを動かしてもいいですか?」と、一つひとつ確認しながら拭かせていただいていました。環境整備が終わって退室する時には、他に用事がないか確認し、カーテンをしっかりと閉めてから退室ました。そのようなやりとりを何度か繰り返すうちに、環境整備終了後、しばらくすると閉めたはずの廊下側のカーテンが、いつも10㎝だけ開いていることに気づきました。さっききちんとカーテンを閉めたはずなのに・・・。なぜだろう。

ある日、私は夜勤をしていました。24時を過ぎ、深夜勤務の看護師への引継ぎも迫っていたため、最後の巡視をしていました。ペンライトで足元を照らして音を立てないように静かに歩きながら、一人ひとりの患者さんの様子を見て回っていました。Bさんのベッドに行くと、やはり10cmだけカーテンが開いていました。Bさんの様子を確認し、気を利かせたつもりでカーテンを全部閉めました。すると、中から「少しだけ、カーテンを開けておいてくれないか。」と声がかかりました。私は、「プライバシーを守るためにも、しっかりと休むためにも、カーテンを閉めた方が良いと思ったのですが・・」と伝えましたが、Bさんは、「私に何かがあったら、すぐに気付いてもらえるでしょ。」と、話されました。Bさんは不整脈を患っており、徐脈による意識消失を経験された方でした。いつ不整脈が出現するか分からない怖さや不安があったのかもしれません。Bさんにとって、カーテンの10cmの隙間が、プライバシーを守り、何かがあったら看護師がすぐに気付いてくれるはずだという安心を得るための絶妙な隙間だったのだと思いました。そのことがあってから、Bさんだけでなく他の患者さんにも、「カーテンを閉めますね。」ではなく、次のように確認するようになりました。

 

教員にこ
教員にこ

「カーテンを全部閉めた方がいいですか?」

 

「窓側を空けておきますか?廊下側だけ閉めておきますか?」

そのように確認するようになってから、カーテンの閉め方ひとつ、患者さんの数だけ、様々なパターンやこだわりがあることがわかりました。

シンプル

・日差しが強くてまぶしい。暑いから、窓側のカーテンを閉めてほしい。

・廊下を歩いている人に見られたくないから、廊下側のカーテンだけ閉めてほしい。窓から見える景色は見たい。

・目の前のベッドの方と仲良しだから、日中だけ目の前のカーテンを開けてほしい。夜間は閉めてほしい。

・自分は絶食中だから、食事の時間はカーテンを閉めてほしい。食事を見たくないし、においも気になる。

・化学療法中、副作用が強いときは、カーテンを閉め切ってほしい。心配されたくないし、気を遣わせるのも申し訳ない。吐くかもしれない。  などなど。

まとめ

患者さん一人ひとり、安心できる環境、療養環境に求めているものは違うのだということに気づかされました。よく学生が、「患者さんに寄り添った看護がしたい。」と言います。寄り添うとは、話をじっくり聞いたりすることもそうだと思いますが、このような患者さんにあった環境整備をすることも、「寄り添った看護」ではないでしょうか。

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