病室の換気をすること(奥が深い環境整備)

新人看護師・看護学生にもできる優しい援助
実は奥が深い環境整備。侮っていませんか?

看護学校で一番はじめに習う技術が環境整備。患者さんのベッド周りをきれいに整理整頓して、環境清拭用クロスで拭きとって、リネン類を整えて。患者さんの私物をもとの位置に戻したら終了。ナースコールのセッティングも忘れずに。環境整備が終了したことを患者さんに告げて、つぎの部屋へ・・・。

流れ作業のように次から次へとこなしているように見える看護技術かもしれません。でも、実はすごく奥が深いのです。

病室内の空気を新鮮な空気に入れ替えることも、大切な看護です。皆さんは、意識して行っていますか?

エピソード:病室の換気をすること

私が看護学校1年生の時の話です。20年以上も前のことですが、いまだに覚えています。

当時は3年の先輩が担当する患者さんがいた病室に、私が担当する寝たきりのAさんもいらっしゃいました。初めての臨地実習で、どのようにAさんと接すればよいのか、実習で何をすればよいのか全く分からず、ただただ、Aさんのところに行き、天気の話など、取り留めのない話をしては時間をつぶしていました。今考えると、看護の対象を理解する。対象との関係性を築く。看護とは何かを考える実習だったのかもしれません。当時の私は、本当に何も考えていない学生でした。3年の先輩は、私の相談役でした。(今では考えられない実習スタイルです!)

その日もナースステーションにいるのがいたたまれなくなった私は、Aさんのところに行き、いつも通り世間話をしていました。先輩が病室に入ってきました。先輩は、担当患者さんのところに行くと、

「窓をあけてもいいですか?今日は少し肌寒いですが、すごくいい天気なんですよ。気持ち良い風が吹いているんです。空気の入れ替えをしませんか?」

と、提案していました。先輩の「窓を開けますね。」という病室全体に響く声とともに、廊下のドアが開けられ、窓が開け放たれました。すると、サーッと気持ちの良い風が病室内に入ってきました。なんて気持ちがいい風なのだろう。病室特有の何とも言えないにおい、消毒薬のにおい、食事のにおい、何日も入浴できていない時の少し汗ばんだにおい、うっすらとした排泄物のにおい。それらのにおいが一気に流されて、何とも心地の良い気分になりました。初めての実習でしたが、いつの間にかその病室特有のにおいに慣れ、「病院とはこういうものだ」と思ってしまっている自分に気づかされた瞬間でした。慣れって恐ろしい・・・。

そして、Aさんをみると、なんとも清々しい笑顔をしていました。空気を入れ替えただけで、なんでこんなに嬉しそうな笑顔になったのだろう。あの時は不思議でしょうがなかったのですが、今ならなんとなくわかる気がするのです。風に乗って届いた新鮮な空気の匂い、空気の冷たさや風の流れを感じ、季節の移ろいを五感で感じること。療養生活では、そんなささいな変化を感じることが、自分が生きていることの実感であったり、生きる支えになったり、生きていてよかったと思える瞬間になりうるのではないかと思うのです。もちろん、病室特有のにおいがなくなることで、清々とした気持ちにもなるでしょう。

3年の先輩がそこまで考えて窓を開けたとは思いませんが、当時の私は、病室の空気が淀んでいることに気づいて空気の入れ替えを提案し、自分の担当患者さんだけでなく、病室の患者さん全員に配慮している先輩の姿がとっても格好よく感じられました。

まとめ フローレンス・ナイチンゲール(Florence Nightingale)の「看護覚え書」より

「看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静かさを適切に保ち、食事を適切に選択し管理すること、 こういったことのすべてを、患者の生命力の消耗を最小にするように整えることを意味すべきである。」

「看護がなすべきこと、それは自然が患者に働きかけるに最も良い状態に患者を置くことである。」

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