看護学校で学ぶ内容とは?

看護学生スタートガイド

看護学校では、講義、演習、実習など様々な学習を通して看護を学んでいきます。

今回は、主な学習内容と実習についてご紹介します!

人の体のしくみを学ぶ

解剖生理学

人の体のしくみ(解剖)とはたらき(生理)について学びます。臓器の各部位の名称、骨、神経の名称や位置、それらの役割など、覚えなければならないことはたくさんありますが、看護を学ぶうえで基礎となる重要な科目です。心臓や血管について学ぶ「循環器系」、肺や気管について学ぶ「呼吸器系」など、系統別にしくみとはたらきを関連づけて学習します。

教員にこ
教員にこ

解剖生理学がしっかりと身についていると、今後の実習で受け持つ患者さんの疾患を理解するときに必ず役に立ちます。

生化学

生物を成り立たせている物質(たんぱく質、糖質、脂質、核酸など)の構造や性質、それが代謝(合成・分解)される仕組みを学びます。生活習慣病や遺伝病なども含めて、多くの病気を理解するための基礎となります。

疾病の予防や統計、法律について学ぶ

公衆衛生学

疫学(統計学などの手法を用いて、疾病の原因や全体像を調べる学問)に基づいて、疾病の予防、健康の増進について学びます。また、学校、地域、職場、母子など様々な集団を対象とする公衆衛生(保健)活動について学びます。

教員にこ
教員にこ

この科目は、例えば自分の家族や自分自身の健康増進のために何をしたらよいのか、疾病予防のために患者さんや地域の方にどんなことを指導したらよいのかを考える力につながります。

関係法規

保健師助産師看護師法、医療法、健康増進法、地域保健法、介護保険法など、保健医療福祉分野に関連する法律について学びます。医療及び看護は法律に基づいて行われているので、それらの内容を理解しておくことは重要です。

疾病の原因と薬について学ぶ

病理学

疾病の原因と、それがどのように発生し、臓器や細胞にどんな変化が起こるのかを学びます。疾病の原因となる「炎症」「感染症」「循環障害」「腫瘍」などの異常について学んだ後、循環器、呼吸器、消化器などの系統別に主な疾病について学習します。疾病の成り立ちを知ると、後に学ぶ医療行為や患者さんへのケアの意味が理解できるようになります。

微生物学

細菌やウイルスなど、顕微鏡でしか見えない微生物や、それらが引き起こす感染症について学びます。基礎知識として微生物の種類と特徴、さらに感染と生体防御のしくみ、主な病原微生物、感染源と感染経路、感染防御の方法、感染症の治療などについて学びます。

薬理学

薬物について、また薬物を用いた治療について学びます。薬物が作用するしくみ、体内で吸収され、分布し、代謝・排泄されるメカニズム、薬物どうしの相互作用なども学びます。また、「消化器系作用薬」「抗感染症薬」「抗腫瘍薬」など薬物の種類別に、作用と投与方法、副作用などについて学習します。

看護の基礎について学ぶ

看護理論

看護の知識を様々な視点から理論立てて具体的に説明したものが看護理論です。看護理論と、それを提唱した看護理論家について学びます。看護理論を学ぶことで事象の成り行きや背景を理解しやすくなるので、実習でも患者さんに適した看護を考える助けとなります。

フィジカルアセスメント

身体的な(フィジカル)データを収集し、患者さんの状態を診査(アセスメント)する方法を学びます。血圧測定や呼吸音の聴診、腹部の打診・聴診、全身の外観や皮膚粘膜の視診などの技術と、これによって得られる情報をもとに健康状態を判定する方法を学習します。

教員にこ
教員にこ

看護師にとって、技術をしっかり身につけることは必要不可欠です。身につけたことは患者さんの状態を正確にアセスメントできる力につながります。

日常生活援助技術

疾病や障害によって日常生活に支障をきたしている人が、できる限り普段に近い状況で生活ができるように援助する技術です。具体的には、患者さんの環境調整、安楽確保、移動、身体の清潔・整容(入浴の介助、全身清拭、整髪など)、食事、排泄などに関わる援助技術の習得を目指します。

患者さんの特徴に応じた看護を学ぶ

成人看護学 主な対象:成人期(おおよそ16~64歳)の患者さん

成人期にある人の身体的・精神的な特徴、そして各器官系統別に主な疾患の病態・症状、治療、看護を学びます。急性期(病状が急激に進行する時期)、慢性期(病状は比較的安定しているが治癒は困難な時期)、終末期(回復の見込みがなく、死が近い時期)など、患者さんの状態に応じた看護についても学びます。

老年看護学 主な対象:老年期(おおよそ65歳)の患者さん

老年期にある人の身体的・心理的・社会的特徴とその特徴が生活に及ぼす影響、フィジカルアセスメントの方法を学びます。肺炎や骨折、認知症など高齢者に多い疾患と看護、高齢者によくみられる症状と看護、終末期の看護、リスクマネジメントについても学習します。

小児看護学 主な対象:乳児から15歳(中学生)くらいまで

小児の成長・発達段階における心身の特徴を理解し、これを土台に病気・障害を持つ子どもの看護について学びます。乳幼児に特有の疾患、主な小児疾患(系統別)の病態、症状、診断、治療及び看護、さらに小児に起こりやすい事故・外傷と看護も学習します。

母性看護学 主な対象:女性(特に出産前後の女性および新生児)

女性の一生を通じた健康の維持・増進および疾患の予防を目的とした看護、また妊娠期・分娩期・産褥期(産後6~8週間)の身体の変化とその時期の疾患と看護について学びます。また、新生児の特徴と疾患・看護についても学びます。母親の心理社会的側面のケアや家族への援助についても学習します。

精神看護学 主な対象:精神疾患(精神障害)を有する人

初めに精神(心)の構造とはたらき、記憶や思考などの認知障害、感情と行動、人格の発達、不安と防御、精神の危機(ストレス)への対処などを学習します。次いで、精神疾患の症状と診察、主な精神疾患とその治療法、精神疾患をもつ人への看護について学びます。精神疾患をもつ人の地域における生活支援についても学習します。

在宅看護論 対象:在宅療養をしている人

疾患や健康障害をもつ人、その家族に対して、自宅などの住み慣れた環境・生活の場で提供される看護について学習します。在宅看護の対象者の特徴、在宅看護の主な形態である訪問看護、在宅看護を支える制度、在宅看護らではの援助技術などを学びます。

実習について

看護学生が行う実習は臨地実習とよばれ、大きく「基礎看護学実習」「領域別実習」「統合分野の実習」に分けられます。それぞれ、経験する看護技術や受け持つ患者さん、実習施設、実習時間数などが異なります。

基礎看護学実習

看護の基礎を学ぶ実習で、多くの学校で2回に分けて行われます。

1回目は1年次に5日程度実施され、病院の役割や看護師の仕事、患者さんとの関わり方などを学びます。病院見学や患者さんとのコミュニケーションが中心です。

2回目は、2年次に2週間程度で実施され、受け持ち患者さんから話を聴いて患者さんが抱えている問題を見つけだし、必要な看護を計画して実施します。

領域別実習

成人看護学、老年看護学、小児看護学、母性看護学、精神看護学の各領域について学ぶ実習です。

多くの学校で、2年次の冬から3年次の秋ごろにかけて各領域につき2~3週間程度で行われます。

行われる実習内容は領域ごとに様々で、実習場所は必ずしっも病院(病棟)とは限りません。たとえば、老年看護学実習は高齢者施設で行われたり、小児看護学実習は保育所などでおこなわれたりもします。

統合分野の実習

在宅看護実習では訪問看護や地域における多様な場で学びます。

統合実習は今まで経験してきた実習の総まとめのような位置づけの実習で、3年次の10月~11月頃に行われます。看護師長さんなどについて回り、その役割を学んだり(看護管理者実習)、複数の患者さんを受け持って看護を実践したりします。申し送りやチーム医療について学ぶところもあります。また、夜勤の時間帯の看護を体験する夜間実習もこの時に行われます。

2022年4月に看護学校(大学・短大・専門学校)に入学された方から、新しいカリキュラムでの看護教育が始まります。「看護基礎教育検討会報告書(令和元年10月15日・厚生労働省)」

具体的に何が変わるのか、代表的なものだけピックアップしてお伝えします。

  • 総単位数が97単位から102単位に充実
  • ICTを活用するための基礎的能力やコミュニケーション能力の強化
  • 臨床判断能力等に必要な基礎的能力の強化のため解剖生理学等の内容を充実
  • 対象や療養の場の多様化に対応できるように「在宅看護論」を「地域・在宅看護論」に名称変更し内容を充実

教育は時代の変化にあわせて一定の期間を目途に進化していきます。今回のカリキュラム変更も同様です。
医療の進歩や社会の変動に対応できる看護師を養成するために考えられているですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました