看護実習。学生もしんどい。教員もしんどい。
看護学校は、看護師になるための学校です。
2年生までは、講義が大半です。
学校によって時期や期間が違うかもしれませんが。
1・2年生は、だいたい、年に2回、12日間程度の実習が乗り越えられれば。
あとは、期末試験、技術試験に合格することができれば。
めでたく進級することができます。
1・2年生の実習も、それはそれで大変なのですが。
それについては、またの機会にお伝えしたいと思います。
3年生になると、ほとんどが病院や施設での実習です。
週に1回程度、講義を受ける日があるぐらい。
それ以外は、11月頃までずっと実習が続きます。
コロナ禍の状況においては、夏休みの時期も変則的になってしまいました。
3年生は、コロナ禍前は、8・9月にまとめて長期休業がとれましたが。
現在は、学生によって(実習グループによって)、ゴールデンウイーク頃に夏休みがあったり。
6月と8月に2週間ずつ、分割で夏休みがあったり。
今までとは違う学校生活に、学生も、教員も慣れないままでいます。
いつもの時期に、実習ができないだけで。
様々な余波が広がっていきます。
今まで全員で受けていた講義が受けられなくなり。
同じ授業を、時期をずらして2回行ったり。
(実習中の学生と、夏休み中の学生と、講義を受ける学生がいるので・・。)
教室にいる学生と、遠隔地にいる学生とZOOMでつないで同時に授業を行ったり。
様々な実習方法や講義の方法を検討しながら。
今までの学生と、実習での学習内容に差が生じないように、配慮してきました。
考えること、検討し合うこと。
試しにやってみること。やってみて振り返ること。
そして改善していくこと。
とにかく、仕事がどんどん増えていきます。
それでも講義や実習は待ってくれません。
優先順位をつけながら、何とか、こなしていくしかない、毎日でした。
しんどい毎日は続いていきます。
3年生の実習指導。実習記録から見えてくる、心配な4パターン。
実習指導をしていると、毎日書くべき実習記録に、何も書かれていないまま、提出してくる学生がいます。
うちの看護学校は、「実習記録を埋めるための実習」ではなく、「実際に患者さんとしっかり向き合い、看護を体験してほしい、看護の実践から看護を学んでほしい」との考えから、実習記録用紙が大幅に少なくなりました。
書く量が減ったのです。
学生のみなさん。
楽になったでしょ?そうでしょ?と思うのですが。
それでも、学生は、「記録が大変です。」「何を書いたらいいのかわかりません。」といいます。
どの看護学校でもそうだと思いますが。
「この実習では、こんなことを目標に実習しますよ。そのために、こんなことを体験してきてくださいね。」
「体験して考えたことや学んだことは、記録用紙をこんな風に活用してまとめてみてね。」
と、実習前にオリエンテーションを行い、指導しているはずなんです。
何で書けないのかな?
オリエンテーション、聴いてたかい?どうしたのかな?
と思う一方で。
学生の実習の様子や、反応から。
実習記録を書くのが苦手なんだろうな。難しいんだろうな。
と、思える学生も、結構います。
実習指導中、私が必ず行っていたこと。
それは、学生を実習に送り出す前日に。
もしくは、実習日の朝、できる限り毎日、
実習指導担当グループ全員の「今日の実習目標の確認」と、「今日の行動計画の確認」をすることです。
この2点を確認すると、心配な学生か、大丈夫な学生か、だいたい判断することができます。
「心配な学生」は、
実習の目的目標が十分に理解できていないため、今日、実習で何をしたらよいかわからない学生です。
「なんとなく、実習グループのメンバーと同じように、行動計画を書いてみました」っていう感じで書いてあります。
「大丈夫な学生」は、
実習の目的や目標が理解できていて、今日、実習でやるべきことがわかっている。
そして、行動が計画できている学生です。
「今日から担当患者さんのリハビリが始まるので、安全に環境を整えながら、日常生活動作の状況を確認する。」
「13時からリハビリ。配膳後すぐ休憩。12時45分に訪室、食事量と体調を確認。」などと書いてあったら、合格です。安心して実習に送り出せます。
「とってもいいね。それでやってごらん。大丈夫だよ。いってらっしゃい。」と笑顔で送り出し、
少しの自信と、勇気を持たせてあげればOKです。
「大丈夫な学生」は、見守っているだけで、自分の力でどんどん実習を進めていくことができます。
「心配な学生」は、支援や助言が必要です。
心配な学生には、4つの傾向があります。
(あくまでも、看護教員にこの感覚です。)
- 看護師になりたい。真面目で課題もこなすが、成績が伸びない。深く考えることが苦手。
- 看護師になりたい。頭は悪くないが、勉強は好きではない。課題の取りかかりが遅い。
- もともと看護師にはさほどなりたくない。資格は取りたい。(親に勧められたから、など)
- 看護師になる自信がない。実習に行きたくない。課題に取り組めない。
心配な学生の傾向①:看護師になりたい。真面目で課題もこなすが、成績が伸びない。深く考えることが苦手。
①番の学生は、やるべき事を、きちんと自分なりにやってくる学生です。
でも、もともとの学力が高い方ではなく、深く考えたり、自分の考えを表現することが苦手な傾向があります。
そのため、少し、深く掘り下げて考えてもらう必要があります。
たとえば、今日の実習目標に「足浴をして、笑顔になってもらう。」と書いてあったとしたら。
1年生の実習であれば、OKを出します。
でも、病態生理学やその看護を学んだ3年生では、レベルの低い目標です。
ここは、学生へのアプローチが必要な場面です。
足浴、とってもいいね。療養中の患者さんが笑顔になったら、とっても素敵だし、嬉しいよね。
どうして足浴をしようと思ったの?
患者さん、寝たきりで、入浴ができないんです。
昨日、清拭をしたら、足が冷たいし、垢が溜まっているようでした。
もう少し、掘り下げが必要です。
足が冷たくて、汚れていたら、きれいにして気持ち良くなってもらいたいよね。
なるほど。とってもいいね。
なんで、笑顔になってもらいたいとおもったの?
寝たきり状態が長くなっている高齢な患者さんなんです。
挨拶をしたり、清拭の時に声をかけても反応がなかなか返ってこなくて。
足浴をしたら、良い反応が見られるのではないかと思って。
足がきれいになって温まったら、気持ち良いですよね。
そうしたら、笑顔が見られるのではないかと思って。
なるほど、少し学生の考えていることが伝わってきました。
アプローチしても、なかなか反応が返ってこない患者さんなんですね。
耳が遠い患者さんなのかしら。
高齢な患者さんだから、認知機能に問題はないのかしら。
今の意識レベルはGCS(グラスゴーコーマスケール)だとどれぐらい?
大きな声でなくても反応が返ってくることがあるので、難聴ではないと思います。
GCSだと・・・。
勉強不足ですみません。
意識レベルを確認しようと思っていませんでした。
難聴ではないことは、しっかり観察できているのね。
足の冷感や汚染も観察できているようだし、観察力があるのね。
じゃあ、今日は、患者さんの反応を自分の感覚でとらえるのではなく、GCSなどで評価できるといいですね。
足浴を実施する前と後で、患者さんの反応が評価できると、今まであなたの感覚でとらえていたことが客観的に評価でき、継続して観察していくことができますね。
なぜ足が冷たいのか、脳血管疾患の既往歴はないのかなど、色々と質問したいことはありますが。
「患者さんの良い反応を見たい、笑顔を見たい」と思っている学生の思いを大事にしたいと判断。
これ以上の質問や確認は踏みとどまります。
看護教員にこは、
実習で患者さんと関わって「看護を実践する」という体験を通しての学びは、
教員から与えられた学びの何十倍もの学びとなって。
学生の財産となっていくと考えています。
なので、
今日は、ぜひ、その患者さんに足浴を実施してみてね。
患者さんがどんな反応をしてくれたか、後で教えてくれる?
患者さん、笑顔になってくれるといいね。
というやりとりをし、この日の朝は終えました。
この学生のように、患者さんへの優しい思いを持ちながら、
実習でしっかりと関わってくることができれば。
後から、教員の支援によって、学びを深めていくことができます。
その場でGCSで評価できなかったとしても、後で教員と確認できればいいと思うのです。
学生の患者さんへの思いを大事にしながら、指導する。
今回の学生は、患者さんへの優しい思いは十分にありました。
努力もできます。
ただ、看護師として患者さんと関わるための視点や考え方、知識の活用が不十分でした。
教員として、このような学生に丁寧に関わるのは、大変ですし、根気が必要です。
学生の方も、今までこのように深く考えながら行動していなかったと思うので、大変疲れると思います。
(今までは、足浴ができた。良かった。患者さんにありがとうって言われた。嬉しかった。など、深く考えずに行動し、実施できてよかった、という思考になりがちだったと思うのです。)
ただ、2~3回、丁寧に深く考えるトレーニングを続けていくと、観察したことや学習した知識を、自分で関連させながら、深く考えていけるようになります。
看護師らしい考え方が身についてきます。
学生が、患者さんの事を考えながら、優しい気持ちで一生懸命に考えた事。
学生が観察できたこと。大事だと思ったこと。
教員として、まずは、しっかりと傾聴し、受け止め。
絶対に否定しないこと。
根拠がなかったり、優先順位が間違っていることは多々あります。
ですが、学生なので、間違っていてもいいと思うのです。
間違いから気づき、学ぶことができればいいと思います。
学生ですから。
教員として、学生に寄り添う。学生と一緒に看護する。
看護実習では、教員は、学生が実習で看護を学べるようにサポートします。
でも、私としては、学生も教員も看護チームの一員だと。
教員も、学生と一緒に患者さんを看護しているつもりで助言しています。
教員が、学生と一緒に患者さんに関わる機会は多くないのですが。
患者さんの笑顔を見て、学生と共に喜んだり。
足浴ができたと報告してくれた学生の成長を、頼もしく思ったり。
「やっぱりよくわかりません」と言う学生と一緒に、教科書を見て悩んだり。
大変な実習だからこそ、学生の知識のなさや努力不足のせいにするのではなく。
(もっと頑張りなさいよ、と、突き放すのではなく。)
いつでもそばにいるよ。大丈夫だよと。
何に困っているのかな。不安なのかな。
と、いつも側にいて、学生に寄り添える教員でありたいと思っています。
一緒に看護をしたいと思っています。
・・・。休職中ですが。
文章量がだいぶ多くなってしまったので。
次回、心配な学生の傾向②についてお伝えしたいと思います。
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