その27:基礎看護実習 初日の指導案⓺

看護教員にこの実習指導の実際

基礎看護実習、初日の指導案を解説します。

基本設定は、

基礎看護実習1(7日間)

実習目標:看護の対象を理解し、看護の実際を知る

実習内容:担当する患者さんとのコミュニケーション

     看護師と共に、看護援助を体験する

実習時間:8時30分~16時30分(昼休憩1時間)

です。

それぞれの看護学校や大学によって、先生方の考え方によって、実習での指導方法は様々だと思います。

これは、教員にこが、10年間実習指導を続けてきた中での、私なりの工夫が盛り込まれた指導方法です。

私自身の失敗や体験に基づいたものなので、参考までに、ということで、お願いいたします。

私が大事だと考えている以外にも、大切なことがあるかもしれませんが。

私の学びを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。

「病棟オリエンテーションを受ける」7番からの指導案

「病棟オリエンテーションを受ける」ところからの指導案。

今回でシリーズ最後です。それでは9番から解説します。

病棟オリエンテーションを受ける

  1. 場所の準備
  2. 自己紹介
  3. 病棟紹介
  4. 病棟案内
  5. 私物の管理
  6. 個人情報の管理
  7. 感染対策
  8. 危機管理
  9. 体調管理
  10. 担当患者の紹介・質問・最終体調確認

体調管理

看護実習で学んでいくためには、心身ともに健康であることが重要です。

実習が始まると、通学時間や生活のリズムが大きく変化し、 体調を崩しやすくなります。

体調不良の状態で実習を行うと、集中力や判断力が落ち、患者さんとの関わりや看護師さんと援助を体験する中での気づきが得られず、せっかくの学びの機会を失ってしまいます。

また、事故を起こすリスクも高まりますし、集中して実習をしていない様子は看護師さんや患者さんにも伝わります。

信頼関係を構築する上でも支障をきたすようになります。

時々、病棟オリエンテーションや学生カンファレンスの最中に、居眠りをしてしまう学生がいます。

指導者さん、教員、学生6名でカンファレンスをしているのに、なんで居眠りができるの??

と、指導者さんもびっくりするのですが。

声をかけたり、体をゆすり、一時的に目を開けても、眠くなってしまうのです。

不安で眠れなかったのか、緊張の糸が切れたのか、事前学習が間に合わずに徹夜したのか。

学生によって原因は様々ですが、このような実習態度でよい実習ができるはずもありません。

このような学生がいた場合は、あとで個別に生活状況確認と指導をします。

さらに体調を崩して休んでしまったら、7日間しかない実習のうち、何日実習に参加できるのでしょうか。

コロナ禍ということもあり、解熱や症状消失後、既定の日数は症状が再発しないことを確認してからの登校・実習再開となります。

7日間の実習は、すぐに終わってしまいますね。

実習に出席できた日数で、実習目標はどこまで到達できるのでしょうか。合格点がもらえるのでしょうか。(実習態度も評価に含めている学校がほとんどだと思います。)

なにより、臨床での貴重な学びの機会だからこそ、患者さんと看護と向き合って、しっかりと学んでほしいのです。

誰しも体調不良になることはあります。仕方がない場合もあります。

でも、実習で学ぶための準備を誠実に行っていればこそ、「仕方がないよね。」という判断になります。

指導者さんは、実習のたびに患者さんの選定に奔走してくださいます。

学生さんに、しっかりと実習で学んでほしいからです。応援しているからです。

担当させていただく患者さんも、学生が好きで受け持ちを許可してくださるわけではありません。(なかにはそのような方もいらっしゃいますが。)

「立派な看護師さんになってほしい。そのお手伝いをしたい。」という思いで、心身がお辛いなかで担当を許可してくださいます。

学生の皆さんは「若いから大丈夫、2~3日寝なくても何とかなる。」と思うかもしれませんが。

病気と闘っている患者さんと向き合うのは、学生さんにとって、大変苦しい経験になることもあります。

心身が健康だからこそ、前向きに物事をとらえ、勇気を出して患者さんや看護師さん、医療スタッフと向き合うことができるのです。

学生さんは、実習が初めての経験なので、一日一日がどれほど疲れるか予想できないかもしれませんが。

心身共に万全の状態で日々過ごせるよう、ご家族にも協力を得ながら頑張っていただきたいと思います。

看護師は常に体調管理が求められています。

体調管理に気を付けていれば、患者さんの看護を全力で行うことができます。

また、私生活も充実させることができ、趣味なども全力で楽しむことができるようになります。

それは精神的な安定にもつながっていきます。

実習だけ乗り切ればよい、ではなく。

これからの学校生活、看護師生活を自分で切り開いていくために、ぜひ頑張ってもらいたいところです。

担当患者の紹介

学生一人ひとりの担当患者さんを、学生に紹介していきます。

患者さんの氏名、年齢、性別、疾患名、治療やリハビリの状況、ADLの状況、主な看護ケアなど。

1年生なので、詳細とまではいきませんが、ほとんど答えを述べてしまっている感じです。(笑)

1年生への患者紹介は、情報収集するポイント・答えを教えているようなもの。

でも、それでいいんです。

教えてもらった情報をもとに、学生が自分でカルテを確認し、患者さんからお話を聴く。

そして、指導者さんの言った、「・・・。」という情報って、こういうことだったのね。

というような、知識から体験を通した理解になればいいのです。

担当の患者さん、「ADLは全介助だけど、コミュニケーションに問題はない」って指導者さんが言っていました。

私が患者さんに、「おはようございます。」と声をかけたら、

目を見て、「おはよう。」って言いながら右手をあげて笑ってくださいました。

全介助って聞いてドキドキしていましたが、丁寧にお話しながら関わらせてもらおうと思いました。

この学生は、全介助とは寝たきり・まったく動けないというイメージがあったのかもしれません。

また、あまり反応のない患者さんをイメージしたのかもしれません。

でも、実際に患者さんにあってみて、日常生活動作すべてに介助は必要かもしれないけど、自分と変わらない「一人の人間」、「生活者としての人間」と感じたのかもしれません。

1年生の実習目標は、「看護の対象を理解し、看護の実際を知る」

実習内容は、「担当する患者さんとのコミュニケーション」でした。

「学校で学んだ知識を体験を通して理解する」とは、このような体験を大事な学びの機会として取りあげていくということです。

少し難しいですね。

話は変わります。

学生は、自分が担当する患者さんの情報のみメモを取ろうとするのですが。

看護はチームで行うものです。

自分の担当患者さんの情報だけをとればよいというわけではありません。

看護学校1年生チームとして、協力し連携しながら実習していくためには、自分の担当患者さんの情報だけでなく、チームメンバーが担当している患者さんの情報もとらないといけません。

何も情報がないと、カンファレンス等でアドバイスができず、また、相談しても適切なアドバイスが得られないからです。

 

なので、メンバーが担当する患者さんの情報もメモするよう促します。

2・3年生になると、疾患や疾患に伴う看護を学んでいるので、患者さんの氏名、年齢、性別、疾患名ぐらいを紹介するのみで、あとは自分で情報収集するよう促します。

教員にこ
教員にこ

この場面で注意しなければならないことは、患者さんの個人情報を、どのようにメモに取っているかです。

フルネームや年齢、病室をそのまま書いていないか。

個人情報保護の視点で、学校の規定を守ったメモの取り方をしているか、確認する必要があります。

学生全員の紹介が終わったところで、みんなでメモの取り方を確認し合います。

必ず、個人が特定されてしまうようなメモの取り方をしている学生がでてきます。

注意を促すためにも、初めての実習では早い段階でメモ帳を確認するとよいと思います。

学生が担当する患者をどのように決めるのかは、またの機会に解説したいと思います。

質問・体調確認

病棟オリエンテーションを受けた学生からの質問

指導者さんからの病棟案内・病棟オリエンテーションを全部受け終わったところで、60分から90分でしょうか。

途中で教員の方から実習指導者さんに質問をしましたが、学生は基本的に受け身でオリエンテーションを聞いていました。

なので、最後に学生から質問や確認したいことがないか、指導者さんが学生にします。

大抵は、担当する患者さんについての質問です。(笑)

指導者さんは、答えられるところはお応えくださり、学生自身が情報収集してほしい部分は、

「患者さんとお話してみてね。」

と、上手にやり取りしてくださいます。

なかには、指導者さんに、趣味を掘り下げるような質問をするツワモノもいます。

そんなやり取りができるのも、指導者さんがそのような雰囲気づくりに協力してくださったおかげかな、と考えます。

最後の体調確認です。

いよいよ、患者さんに挨拶に行きます。

時間はすでに10時です。

ほとんどの看護師さんは、ナースステーションにいません。

点滴交換や清潔ケア、バイタルサイン測定やナースコールの対応をしています。

これから学生は、担当患者さんをケアする看護師さんに挨拶し、患者さんのところに行きます。

その前の、最終体調確認です。

朝の時点で問題がないことを確認していますが、本当に問題がないか、トイレに行かなくても大丈夫か。

水分をとらなくて大丈夫か。

担当患者さんが決まったところで、事前学習の確認はしなくても大丈夫か、学生に尋ねます。

みんな、緊張した面持ちですが、気合は入っています。

まとめ

今回は、「病棟オリエンテーションを受ける」の解説、最終回でした。

長かったですね。指導者さんとの出会いの大事な部分が終わりました。

これから、ようやく看護師さんに挨拶に行って、患者さんとご対面です。

まだ、10時です。

次回は、実習初日、午前中の指導案について解説したいと思います。

今までは、学生全体に指導する形でしたが、これからは、学生個々の状況に合わせた指導について解説できればと思っています。

これからも長くなりそうな気配ですが、日頃、新任の先生方や指導者さんにゆっくりお伝えできていなかったことを、解説できるようにしたいと思っています。

よろしくどうぞ、お付き合いください。

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