その9:1年生の初めての実習指導 実習指導者との打ち合わせ内容③

看護教員にこの実習指導の実際

看護実習の指導の準備。1年生は念入りに。

前回は、指導者さんとの打ち合わせ内容の

  • 実習初日の休憩タイミングは、こまめに。
  • 学生の居場所の確保は重要。
  • 病棟の一日の流れと学生の一日の流れをリンクさせる。

の部分で終わってしまいました。

今回、指導者さんとの打ち合わせ内容の、

  • 実習病棟の案内は、看護実践を想定して。
  • 学生への指導は、指導者さんもその日のうちに。
  • 初めての担当患者さんは、会話できる方が理想。
  • 教員の実習スケジュールを、指導者さんも把握する。

について、お伝えしたいと思います。

学生が安全に、様々な学びを実習で得るためには、準備が重要です。

私が大事だな、と思っていることの1つひとつが、

私自身の失敗や、体験に基づいたものです。

私が大事だと考えている以外にも、必要なことはあるかもしれませんが。

私の気づきを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。

学生さんも大歓迎です。

1年生の初めての実習指導 実習指導者さんとの打ち合わせ内容

実習病棟の案内は、看護実践を想定して。

実習施設の構造や設備、物品の説明については、毎回、指導者さんに実施していただいています。

プリントを学生に配り、口頭でも簡単に説明していただけるのですが、

実際に歩きながら案内してくださいます。

「ここは、患者さん用のトイレで、汚物を処理する時は、こちらで。」などと、丁寧に説明していただけます。

学生が実習をしていて困らないように、使用するであろう物品や場所を一通り説明してくださるので、

本当に助かるのですが。

学生の様子を見ると、メモを取っている学生は少数で、受け身で説明を聞いているのがわかります。

指導者さんは、必要だと思って一生懸命説明してくださっているのに。

学生は、指導者さんが、なぜ丁寧に説明をしてくださっているのか、本当の意味を飲み込めていないのです。

なので、ある程度、指導者さんの案内が終わったところで。

私は、学生に問題を出します。

教員にこ
教員にこ

あなたの担当の患者さんが、便失禁をしてしまいました。

患者さんは、気持ちが悪いとおっしゃっています。

担当の看護師さんから、

「学生さん、オムツ交換の準備をしてきて。」といわれました。

患者さんにとって、何分以内で準備することが最善ですか?

そうすると、学生たちは相談しながら、

3分から5分以内でしょうか。

時間がかかりすぎると、不快だと思います。

と、答えを出します。

そこで、私は、

教員にこ
教員にこ

では、病棟内の設備や物品の説明を聞いたばかりなので、準備できますよね。

みんなで協力して、5分以内に、オムツ交換の準備をしてください。

少し、意地悪ですね。

学生の反応は、

「えーっ。今からですか。」と、驚きます。

教員にこ
教員にこ

患者さんがいつ失禁するか、予測できないよね。

でも、このような場面は、いつでもありえますよ。

病棟の設備も、物品の場所も説明を受けているのだから、看護師さんは、皆さんに、このように指示を出すと思いますよ。

このように説明すると、学生達も、そっかー。と納得します。

実際に準備してもらうと、相談だけで、5分以上かかります。

「オムツと、おしりふきだけでいいのかな。」

「そういえば、オムツのサイズ、確認していない。」

「便失禁だから、拭くだけじゃ気持ち悪いよね。洗い流すのかな。」

「それも、確認していない。」

「拭く準備と、洗い流す準備、両方したら。」

「準備に時間がかかるよね。」

「陰部洗浄のお湯の温度って、何度だっけ?水温計の場所、どこだっけ?」

「便汚染したオムツの処理ってどうするの?説明、あったっけ?」

「病衣が汚れている可能性は?」

・・・。などなど。

受け身で説明を聞いていると、何も疑問に思わないのですが、

実際に援助する場面を想定し、準備しようとすると、様々な疑問に直面します。

今は、便失禁の場面でしたが、

  • 全身清拭と寝衣交換
  • 口腔ケア
  • 配膳・下膳
  • 足浴
  • 洗髪

など、1年生の実習で、体験しそうな場面を設定し、

学生に考えさせる、準備をさせてみると、主体的な実習につながるかもしれません。

1年生に限らず、3年生には、

「術後のベッドの準備をしてみてください。」など、指示をしてみると、

学習の動機づけになったり、学生の理解度を確認する場面にもなると思います。

もちろん、学生は思考を巡らせて、体も動かすので、

ずっと説明を聞いていた学生からすると、良い気分転換?にもつながります。

また、時間がかかっても、一度準備ができてしまえば、

次回からは自信をもって、1人でも準備することができます。

これも、主体的な実習につながります。

学生への指導は、指導者さんもその日のうちに。

実習指導者さんの中には、経験が豊かな方もいれば、今回が初めてという方もいます。

指導方法については、学生の行動が一つひとつ気になり、その都度学生に指導してくださる方もいれば、

実習期間中、何事もなければいいと、よほどの事がない限り、指導しない方もいます。

学生に指導して、学生を泣かせてしまった過去の経験から、「私からは指導したくないです。先生にお伝えするので、先生から指導してもらっていいですか。」とおっしゃる指導者さんもいます。

学校の教員として、看護師さんや指導者さんにお願いしたいのは、

その場その時の患者さんの心や体の状況に対して、学生が話したことや行動、態度は、

患者さんやそのご家族にとってどうであったかを、看護師としてしっかり判断し、

看護のプロとして、学生に指導してもらいたいのです。

看護師らしい考え方を教えていただきたいのです。

・・。説明が難しいですね。

学生は、学校で看護の基本を教わって実習に来ます。

  • 患者中心の看護
  • 個別性のある看護
  • その人の価値観や生活をふまえた看護
  • 優先順位を考えた看護

などなど。知識として理解していても。

目の前にいる患者さんにとって、どのようにアプローチすれば患者中心の看護になるのか。

寝たきりで、コミュニケーションが難しい患者さんの、価値観や生活をふまえた看護とはどうすることなのかがわからないのです。

たとえば、学生が、寝たきりで、コミュニケーションが難しい患者さんの掛け布団を声をかけずに外したとします。

その様子を見ていたら、看護師のみなさんは、どのように思いますか。

患者さんに声をかける事無く、いきなり布団を外したら、

  • 患者さんがびっくりするかもしれない。
  • 患者さんが何をされるのだろうと怖がるかもしれない。
  • 患者さんが寒い思いをするかもしれない。
  • 患者さんを一人の人として尊重していない。➡患者中心の看護になっていない。

と、思うかもしれませんね。

今、この時、看護師さんや指導者さんが感じた事、考えたことに。

学生が、気づいたり、考えたりできるように、学生にアプローチしていただきたいのです。

看護師
看護師

学生さん。

いま、患者さんのお布団、いきなり外したでしょ。

私、びっくりしたんだよね。

何でびっくりしたと思う?

 

看護師さん、指導者さんは、今、見た事、起こったことをそのまま表現し。

自分が感じたことを、学生に伝えるだけでいいのです。

そうすると、学生は、

「今の、まずかったのかな。」と、自分で自分が行った行動を自覚することができ、場面を振り返ることができます。

また、「看護師さん、なんでびっくりしたんだろう。」と、考えることができます。

看護師
看護師

患者さんの清拭が終わったら、よく考えてみてください。

お昼の休憩の前に、考えてみたことを教えてね。

これで、OKです。

どうでしょうか。

最初は勇気がいるし、難しいかもしれませんが、

まずは、目の前で起きていることを、そのまま表現してみるのは、いかがでしょうか。

たとえば、

看護師
看護師

学生さん、今、歩いてきた廊下を振り返ってみてごらん。

なにか、気づかない?

廊下が濡れています。

看護師
看護師

そうだね。廊下が濡れていたね。

私、危ないと思ったんだ。学生さんはどう思う?

このようなやりとりで、十分です。

学生は、ヘンダーソンが言っていた、「環境」について思い出すかもしれませんし。

「医療安全」の授業を思い出すかもしれません。

看護の現場で、看護師さんや指導者さんとこのようなやりとりをしていていただけると、

学びがどんどん深まっていきます。

指導者さんに、「先生、今日、学生の〇〇さんが、患者さんとため口でお話していました。あとで指導してもらっていいですか。」と言われ、

あとで、その学生に指導しても、

「私、そんな言葉遣いしていないと思います。」と、学生に自覚がないことがあります。

また、看護師さんとの援助中、病衣の紐を縦結びにしていまい、看護師さんが結びなおしていたことがあっても、学生は気づいていないし、覚えていないこともあります。

実習終了間際に看護師さんに教えてもらっても、「そんなこと、ありましたっけ?」と反応する学生もいます。

実習中、学生は緊張と不安な思いを抱えて過ごしています。

そんな学生の物事を見る視野や考え方は、非常に狭く浅くなっています。

なので、何かしらきっかけがあった時に、(声をかけずに布団を外してしまう、廊下に水滴が落ちているなど)

学生を立ち止まらせ、そのきっかけを印象付ける関わりをして頂けるとありがたいです。

まとめ

今回は、指導者さんとの打ち合わせ内容の

  • 実習病棟の案内は、看護実践を想定して。
  • 学生への指導は、指導者さんもその日のうちに。

の解説をしました。

次回、指導者さんとの打ち合わせ内容の、

  • 初めての担当患者さんは、会話できる方が理想。
  • 教員の実習スケジュールを、指導者さんも把握する。

について、解説したいと思います。

とにかく、大事なのは準備です。

学生がのびのびと実習できるための環境づくり、支援をしたいですね。

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