歩行が不安定なAさん。トイレに行くときは看護師さんの見守りでトイレまで歩いている。
そのAさんが、看護師さんを呼ばずに歩きだそうとしているのを発見。
学生の私の見守りでいいのかな?
看護師さんに報告して、看護師さんに見守ってもらった方がいいのかな?
報告している間に、Aさんが転んでしまったらどうしよう。
左前腕に持続点滴を行っているBさん。点滴が滴下していないので、刺入部を確認したら腫脹しているのを発見。
点滴をすぐ抜いた方がいいと思うけど、学生の私はやってはいけないよね・・・。
看護師さんに報告して、すぐに対応してもらいたいけど、忙しそうな看護師さんへの報告、自信がないな・・・。
ベッド上安静で水分制限の指示がでているCさんに、水を汲んできてほしいと頼まれた。
なんだかイライラした様子。急いで対応した方がよさそう・・・。
Cさんに言われた通り、水を汲んできていいのかな?
早く対応しないと怒りだしそう。こまったな・・・。
実習でこのような場面に出会ったことはありませんか?早く看護師さんに報告・相談して対応したいけど、うまく報告できずに困ったことはありませんか?
医療事故の3分の2はコミュニケーションエラーが原因と言われています。正確で的確な情報伝達が医療チームには非常に重要です。(看護実習で患者さんと関わっている学生のみなさんも、チームの一員ですよ。)
Team STEPPSは、Team Strategies and Tool to Enhance Performance and Patient Safetyの頭文字を取ったもので、日本語に直訳すると「チームとしてのよりよい実践と患者安全を高めるためのツールと戦略」です。その中のコミュニケーションツールとして、SBARが様々な施設で活用されています。
今回は、SBARを用いた報告について、わかりやすく解説します!
SBAR
S:Situation 患者の状態・主訴
B:Background 背景・臨床経過
A:Assessment 評価・現状の判断
R:Recommendation 提案と依頼・具体的な要請内容
SBARは、もともと「緊急を要する患者の状態などに際して、効果的に情報を伝達するときに使われる重要な情報交換のコミュニケーションテクニック」ですが、この項目に沿って方向性をもってコミュニケーションをはかることは、どのような場面にも応用できると思います。
たとえば、看護学生さんが看護師さんに報告する場面を想像してみてください。
〇号室のCさんですけど、〇月〇日から入院していて心不全です。利尿剤で薬物治療を行っていて、体重も減少し、心不全は改善してきているようです。でも、最近イライラしている様子で、ナースコールも頻回なんです。口渇が強い様子で、水分制限中なので仕方がないとは思うのですが。今も水を汲んできてほしいといわれたのですが、イライラしている様子で口調も強く、どうしたらよいでしょうか?
このようにダラダラと言われても、「で!?何を相談しているの!?」と、看護師さんは思ってしまうかもしれません。そこで、SBARの内容に沿って情報を整理してみましょう。
S:Situation(患者の状態・主訴)
〇号室のCさんが、水を汲んできてほしいとイライラした様子で希望されています。
B:Background(背景・臨床経過)
70代女性で、心不全で入院し5日目です。利尿剤を使用し、口渇が強いようです。
A:Assessment(評価・現状の判断)
利尿剤の使用と水分制限でIN‐OUTバランスを管理していますが、本日はどのくらい水分をとっているのか分からず、何mlの水分をお持ちすればよいのか分かりません。また、ストレスが強い様子で、どのように対応したらよいか、わかりません。
R:Recommendation(提案と依頼・具体的な要請内容)
どのくらいの水分をお持ちすればよいか、教えていただければ、すぐにCさんにお持ちしたいと思います。ただ、イライラしているCさんにどのように対応したらよいか分からず不安なので、一緒に行っていただけると助かります。
いかかでしょうか。ここまでうまくはいかないかもしれませんが、このような報告ができたら、看護師さんにとってもわかりやすいですね。
看護師さんは、常に患者さんのことを優先して判断・行動しています。学生さんの報告から「患者さんにとって不利益なことが起こったのではないか」と考えてしまうと、学生さんに対して感情的に反応してしまうことがあります。まずは患者さんに関する状態「Situation」を伝えること。そして、どうして報告までに時間がかかったのかなどの理由も含め、学生さん自身の「Situation(状態・主訴)」とは区別して伝えられると良いですね。
おなじみの「報告・連絡・相談」ですが、頭ではわかっていても実践するとなると戸惑うものです。「SBAR」のようなコミュニケーションテクニックを使って実践につなげてみてはどうでしょうか。
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