その17:1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容⑥

看護教員にこの実習指導の実際

教員歴10年のにこが実施している、1年生へのオリエンテーション内容をお伝えします。

「1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容

について、シリーズで解説しています。

基本設定は、

基礎看護学実習1(7日間)

実習目標:看護の対象を理解し、看護の実際を知る

実習内容:担当する患者さんとのコミュニケーション

     看護師と共に、看護援助を体験する

とします。

学生へのオリエンテーション内容(解説内容)は、以下を予定しています。

今回は、番目です。

  1. 「私の実習目標」と「事前学習」の確認と返却
  2. 教員の自己紹介
  3. 学生の自己紹介
  4. グループリーダーとサブリーダーをどのように決めたのか確認
  5. 学生個々の実習目標と学習内容の発表
  6. 学生個々の実習目標と学習内容のグループ内での共有と意見交換
  7. 教員にしてもらいたいオリエンテーション内容
  8. 教員からのオリエンテーション
  9. 実習初日の予定を計画する
  10. 「私の実習目標」と「事前学習」の再提出
  11. 技術練習について
  12. グループの合言葉の確認

追加もあり得ます。(笑)

なお、それぞれの看護学校や大学によって、

また、先生方の考え方によって、

オリエンテーション内容や方法は様々だと思います。

これは、教員にこが、10年間オリエンテーションを続けてきた中での、

私なりの工夫が盛り込まれているものです。

私自身の失敗や、体験に基づいたものなので、

参考までに、ということで、お願いいたします。

私が大事だと考えている以外にも、必要なことがあるかもしれませんが。

私の気づきを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。

学生個々の実習目標と学習内容のグループ内での共有と意見交換

基礎看護学実習1の実習目標は、「看護の対象を理解し、看護の実際を知る」でした。

ここでいう、「学生個々の実習目標」とは、学生一人ひとりの、

自分の成長や実習目標達成のための具体的な目標のことです。

また、明確な目標を立てることで、実習のために必要な学習内容を決めることができます。

学生自身が、自己目標を意識して、実習に向けた学習を計画的に進めていけばいいのでは?

自己目標と学習内容をグループ内で共有し、意見交換する必要がありますか?

と思うかもしれませんが。

学生が、自分一人の力で、患者さんにとって、より良い援助方法を調べたり、工夫して学習を進めていくのは、難しいものです。

そして、実習メンバーがみな同じ目標や学習内容ではなく。

自分の目標に沿った、それぞれ違う学習内容になります。

さらに、看護実習というのは、自分で経験しながら学んでいく学習形態です。

学内で受ける講義は、基本的に先生の授業を聞き、指示に従って考えたり、

クラスメイトと相談したり、問題を解いたり発表したりと、受け身の学習形態です。

先生に指名されたり、発表する時には緊張するかもしれませんが。

基本的には、「やってください」と、言われたことに従えばいいので、

精神的に不安定になることなく、周りの学生と同じように講義を受けていられるはずです。

しかし、看護実習では、学生一人ひとり、得意なこと・苦手なことが違い、

受け持つ患者さんも個性豊かな存在です。

同じバイタルサイン測定の場面でも、

難聴の患者さんとのコミュニケーションに苦労している学生もいれば、

なかなか脈拍を探し出すことができずにいる学生もいます。

また、一緒にいる看護師さんに見張られているようで、いつも通りに動けない学生もいれば、

患者さんに時間をかけて丁寧に測定を行い、患者さんから「疲れた。」といわれ、落ち込む学生もいます。

その、バイタルサインの場面を振り返った時に、

老年期で難聴がある患者さんとのコミュニケーションを学習しよう。

と、考える学生もいれば、

家に帰って、家族全員の脈拍を測り、5秒以内で脈を蝕知できるようにしよう。

と、考える学生もいます。

学校で、先生に患者役をしてもらおう。先生のバイタルサイン測定をして、自信をつけよう。

と考えたり

測定の基本は身についているはずだから、効率よく測定する方法を工夫しよう。

と考える学生もいます。

学生個々の目標も違えば、受け持つ患者さんも個性豊かな存在のため、

学習内容が、学生一人ひとり違ってくるのは当然ともいえます。

だからこそ、学生一人ひとりが何を考えていて、何をしようとしているのか。

どんな課題を抱えていて、どのようにその課題を克服しようと思っているのか。

実習グループ全体で共有し、意見交換する場をつくることが重要になってくるのです。

グループ内での共有と意見交換のねらい

学生が学習上(実習上)の悩みや困りごとを相談しやすい環境(物理的・人的)を作る

物理的環境をつくる。

実習前の学生達は、グループメンバーとの関係性が十分にできていない状態です。

なので、話し合う場をどのように設定し、誰がどこに座るのか決めるのにも時間がかかります。

リーダーとサブリーダーは隣同士がいいのか、教員はどこに座ればいいのか。

そもそも、「自己目標と学習内容のグループ内での共有と意見交換」は、誰が進行するのか。

教員が仕切るのか、リーダーが仕切るのか。

まずは、物理的環境をどのように整えていくかの、学習の機会になればいいと思っています。

グループメンバー全員で教員に相談に来てもいいし、

学生たちが自分たちなりに考えて、物理的環境を整えてから教員に確認してもいいと思いますし。

リーダーがグループを代表して、教員まで相談に来てもいいと思います。

絶対これ、という正解があるわけではないのですが、

グループメンバー全員が納得できる形で、相談しやすい環境(=実習上で学生カンファレンスを実施する時の環境)が、整えられるといいのかなと思います。

実習前に、メンバー全員でこのような段取りの練習をしておくと、

実習が開始されたときに、学生カンファレンスの場などで応用が利きます。

人的環境をつくる。

学習上(実習上)の悩みや困りごとを相談しやすい人的環境については、

「自己目標と学習内容のグループ内での共有と意見交換」の物理的環境を整える段階で、

メンバー内での報告・連絡・相談が必要になってきます。

教員に対しても、報告・連絡・相談が必要です。

その過程の中で、メンバーや教員が、お互いに話しかけやすい雰囲気を醸し出す努力をしたり。

きょういんにこが、学生の強みをみつけて強化できるよう意識してアプローチすることを重視しています。

先生、意見交換の場所ですが、第1教室で、16:30からお願いします。

実習メンバー全員集合してお待ちしています。

実習目標の用紙と自己学習のよういでだいじょうぶですか。

教員にこ
教員にこ

報告、ありがとう。

それで、大丈夫です。

メンバー全員の調整、大変だったんじゃない?みんな、学習しているかな?

サブリーダーの〇〇さんが、協力してくれたので、そんなに大変ではなかったです。

事前学習は、何をやったらいいのかわからないって言っている人もいました。

なるほど。

このリーダー学生さんは、時間や場所の調整だけでなくメンバー全員の準備状況にも目を配れるんだな。

自分だけで頑張るのではなく、サブリーダーさんなど、メンバーとも協力して、効率よく行動することができる子なのかもしれない。

今まで、リーダーのような役割をこなしてきた子なのかもしれないな。と、教員にこは感じました。

教員にこ
教員にこ

こういう調整って、案外大変なんだけど、よく調整できましたね。

実習前なのに、もうこのような段取りができて、素晴らしいです。

では、16:30に、時間通りに始められるようにしましょう。

事前学習については、あまり進んでなくても大丈夫だよって、みんなに伝えておいてください。

まだ実習まで時間があるし、どんな風に進めていけばいいか、今日、確認できるといいよね。

といったやりとりをします。

意見交換の段取りも、事前学習も、この段階では完璧にできるとは思っていないので、ここまでやりとりできれば十分です。

とにかく、実習生と教員が何回もやりとりをして、学生が教員にこの人となりがわかって

気軽に話しかけやすい関係性を築くということ。

特に、実習グループのリーダー学生と気兼ねなく話せる関係性を目指していきます。

意見交換のねらい

信頼関係を築く上での土台

16:30に全員がそろっていたら、とにかく時間通りに行動できていることを褒めます。

これは当たり前のようで、当たり前ではありません。

特に実習が始まれば、患者さんや看護師さんの都合によって時間に間に合わないことがあり得ます。

また、時間変更が必要になることもあります。

その時に、どのように対処すればいいのか、考えて行動することが大事ですが。

その前提として、決められた時間を守る、最善を尽くすという姿勢が備わっている必要があります。

このような姿勢は、メンバー間の信頼関係を築く上での土台にもなります。

時間を守れるということは、自分の時間を大事にできるということ。

そして、メンバーの時間、教員の時間、看護師さんの時間、患者さんの時間を守ることにもつながります。

自分を大切にし、他者を大切にできることにもつながります。

話が少しそれました。

自己目標と事前学習の共有

実習の自己目標をどのように定めたのか、事前学習をどのように進めているのか、

学生一人ひとりの発表を聴き、自分の発表をする中で、

「そんな目標もあるのか」

「そんな課題を克服したいんだ」

「私も、同じような目標にしたけど、学習内容が違う。どうしてだろう。」などと、

いろいろな意見が交わされる中で、考えや学びが深まっていきます。

また、自分なりに目標を達成するための学習内容を考え、計画しているけれども、

違った方法でも目標達成の方向性が見えてきたり、目標達成のための方法が拡がっていきます。

そして、「なるほど、こんなことも実習で起こるかもしれない」と、

経験していないことに対しての、備えができます。

なにより、 自分だけが困っているのではないとわかることで、

少し冷静になり、自分を客観視できるようになります。

実習メンバーとの考え方の違いや、似ているところを認めることができ。

安心したり、「私、結構頑張っているよね。」と、自分の成長を自覚できます。

このような機会を持つことで、実習に対する期待感を高め、

実習メンバーや、教員と対話することの価値観も高めていけます。

自己表出の少ない学生の場合

学生たちのやりとりしている状況を見ながら、自己表出の少ない学生を確認することができます。

また、その学生の発言や反応から、学生の困っていること、気になっていることを推測することができ、

個別に確認したり明確化していくことができます。

最終的に、グループ全体の実習への意欲やグループ内で協力し合う学習行動が促進されるようになります。

お昼休みに、みんなでバイタルサイン測定の練習しようか。

とか、

看護の対象を理解するって、患者さんって思っていたけど、健康な人も看護の対象って習ったよね?

看護学概論、見直した方がいいかな?

とか。

学生の主体的な行動が見られ始めたら、大成功です。

まとめ

前回もお伝えしましたが、教員が「こうしましょう。やりましょう。」と指示をするのではなく。

学生が自分で考えて、自分で出した目標や計画は、成功しても失敗したとしても、学生は納得します。

また、みんなで協力し合って取り組んだり考えたことは、

身に付きやすく、忘れることはありません。

時間はかかりますが、最初が肝心です。

先生に言われたから、ではなく。

学生が自分で決めた目標、計画で実習に臨めるように支援したいですね。

次回は、「教員にしてもらいたいオリエンテーション内容」についてもう少し深く解説します。

コメント

タイトルとURLをコピーしました