脳梗塞患者の看護計画

看護計画(疾患別)

看護問題 例1 不適切な生活習慣により脳梗塞の危険因子を増強させ、脳梗塞の再発を招く恐れがある。

脳梗塞の再発予防には危険因子の管理が大切です。危険因子とは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などがあります。生活習慣の改善と服薬によるコントロールを行うことで、再発が8割程度も減少すると言われています。Aさんの再発予防のためには、初回の脳梗塞後の自己管理の知識を確認し、自ら危険因子の管理に向けて行動にうつせるよう指導する必要があります。

Aさんは入院中に体重が増加し、また服薬の必要性が理解できず、薬の飲み忘れを軽視していました。喫煙や飲酒の習慣もあります。そこで、体重の管理、血圧測定、食事や排泄の管理、内服管理をAさん自身が理解し行動できるよう支援します。

看護目標(期待される結果)

  • 長期目標:再発を起こさない。 (評価予定日:1か月後)
  • 短期目標1:体重が増加しない。(評価予定日:入院3週間後)
  • 短期目標2:薬の飲み忘れがない(評価予定日:入院3週間後)

看護計画

観察計画(OP)

  1. バイタルサイン(体温、脈拍数、血圧、呼吸数、SpO2、意識レベル)
  2. 一過性の脱力、片麻痺、しびれ、視覚障害、構音障害の出現状況
  3. 検査データ(頭部CT検査、頭部MRI検査、血液検査)
  4. 認知機能(HDS-R、MMSE)
  5. 身体機能(ブルンストローム・ステージ:Brs=脳卒中片麻痺の運動機能評価)
  6. 服薬状況
  7. 水分摂取量
  8. 食事摂取状況、間食の有無
  9. 体重(週3回測定)
  10. 排便の回数、便の性状
  11. 行動の習慣(1日の生活パターン、食生活、飲酒、喫煙)
  12. 今まで受けた指導内容と理解度
  13. 家族の再発予防の理解度

援助計画(CP)

1.内服管理
・管理しやすいよう薬を一包化する。
・与薬ケースに1日分の薬を看護師がセットし、あさ、その与薬ケースを渡す。
・薬袋をケースからAさんが出し、服薬後の空袋をケースに戻す(看護師が飲み忘れの確認をする)。
・開封しやすいよう薬袋に切り込みを入れておき、それでも開封困難であれば自助具の使用を考慮する。

2.排便管理
・1200㎖/日の水分摂取を目標に、各食事で200㎖、午前・午後に300㎖ずつ飲む時間を設定する(リハビリテーションや入浴の前後など)。
・リハビリテーション以外の運動習慣として、午前・午後に病棟内廊下を3周する。

教育計画(EP)

  1. 脳梗塞再発予防のための管理(食事管理、血圧管理、服薬管理、喫煙、飲酒、体重管理)や、再発の症状の早期発見、早期受診の必要性をパンフレットを用いてAさんと妻へ指導する。
  2. 栄養管理(エネルギー制限食(1840kcal/日)、塩分制限食(10ℊ未満/日)で、食欲を満たすための工夫について、Aさんと妻が栄養士から指導を受けられるよう調整する。
  3. 体重・血圧の計測値を毎日看護師とともに記録し、自ら変化に気づき生活を見直せるよう指導する。
  4. 薬剤師からの、服薬指導を実施する。
  5. 排便状況を毎日観察し、看護師と共に便の回数・性状を記録し、緩下薬の調節ができるよう指導する。

実施・評価(例)

病院食以外の間食があったため体重が4㎏増加してしまった。しかし、再発予防の指導を行ったところ、自身の健康管理に関心が向くようになり血圧や体重を測定し記録するようになった。内服を忘れることもなかった。ただし、再発の危険性はゼロではないため、退院後もこれらを継続していくことが重要である。今後はAさんだけでなく妻も一緒に、食事管理や服薬管理が習慣化できるよう意識付けをしていく。

評価日:入院3週間後

看護問題 例2 麻痺や筋力低下による転倒や、感覚障害や注意障害による身体損傷を起こす危険性がある。

転倒や皮膚損傷など、身体の二次的損傷はリハビリテーションを中断することになり、廃用症候群の発生や入院期間の延長につながります。事故防止のために環境を整えるとともに、退院後の生活を考慮しAさん自身でリスク管理できるよう意識付けることが大切です。

看護目標(期待される結果)

  • 長期目標:安全に日常生活を送る。 (評価予定日:1か月後)
  • 短期目標:転倒しない。(評価予定日:3週間後)

看護計画

観察計画(OP)

  1. 筋力、麻痺の程度
  2. 高次機能障害の有無(注意障害:歩行時の麻痺側への関心の有無や生活の様子から観察)
  3. ふらつきの有無
  4. 睡眠の状況
  5. 感覚障害の程度、部位
  6. 車椅子、短下肢装具の管理状況
  7. 危険行動の有無
  8. リハビリテーションの意欲
  9. ADL評価(Fim:機能的自立度評価表):2週間毎
  10. 環境整備:毎日(ベッド周囲)
  11. 転倒アセスメント評価:2週間毎
  12. 認知機能:HDS-Rや理解度、判断力、日常生活場面を観察

援助計画(CP)

1.安全な環境づくり
・移動時は看護師が手の届く位置で見守る
・ベッドへの移乗は健側から行う。
・ベッド柵にL字柵を設置し、24時間開放固定とする。
・ナースコールは健側へ設置する。
・「トイレに行くときはナースコールをしてください」と張り紙をしておく。
・べ度の高さをAさんに合わせる。

2.注意障害への対策
・靴の中敷きに「右」「左」と明記する。
・動作中は集中ができる環境作りをする(テレビなどは消す、話しかけない、麻痺側に注意が向くように声かけする)。
・焦らせないようAさんのペースで行動する。

教育計画(EP)

  1. 高次機能障害(注意障害)の症状や対応について、妻に指導する。

実施・評価(例)

Aさんはリハビリテーションで動けるようになり「1人でできる」と過信し、下肢動作時にふらつきが認められるにもかかわらず、1人でトイレを使用していることがあり、トイレ動作時の転倒が懸念された。そのため、転倒受傷の重大さを説明するとともに、自立できるのかの安全を確認するまでは看護師と遺書に練習するよう伝え、本人もそれを受け入れた。麻痺側への注意が乏しく身体損傷の誘因となり得ることから、麻痺側に注意を向けられるよう繰り返し声掛けをしていくことが今後も必要である。

評価日:入院3週間後

看護問題 例3 高次機能障害に関する知識の欠如により、家族支援体制が機能しないおそれがある。

脳梗塞再発後、今までとは違う言動が見られるようになり家族は退院後の生活に不安を抱いています。入院中のAさんの態度にもストレスを感じ、それを表出しています。高次脳機能障害を抱えて社会生活に戻るたえに、Aさんンと家族の関係性とを把握しサポートしていく必要があります。

看護目標(期待される結果)

  • 長期目標:家族が高次脳機能障害を理解し、退院後の生活の不安を軽減できる。(評価予定日:1か月後)
  • 短期目標1:家族が、抱えている問題を表出することができる。(評価予定日:入院3週間後)
  • 短期目標2:家族が、退院後の支援システムを把握できる。(評価予定日:入院3週間後)

看護計画

観察計画(OP)

  1. 面会の状況
  2. Aさんの高次脳機能障害の症状や程度についての家族の認識(注意障害、社会的行動障害:易怒性)
  3. 家族の在宅介護への意思、不安
  4. 経済的状況や社会資源、在宅での家族関係、ライフスタイル
  5. 掻痒感・発疹の有無
  6. 患者、家族の希望

援助計画(CP)

1.家族の面会時には、看護師から声かけを行う。

2.家族にAさんの入院生活の状況を伝え、日常生活上のセルフケア(歩行、着替え、トイレ動作、入浴)に参加してもらう。

3.外泊を計画する。
・外泊前:家屋内の動線の確認
・外泊中:動作の確認と問題点の抽出(看護師、セラピストは訪問調査を行う)
・外泊後:課題の解決(指導、リハビリテーション)

4.患者、家族を交えてケースカンファレンスを行う。

5.地域の継続看護担当者との情報交換を行う。

教育計画(EP)

1.家族の不安、高次脳機能障害への理解度をその都度評価し、繰り返し指導を行う。

実施・評価(例)

常に声をかけたことでAさんと家族が抱えている問題を表出することができた。易怒性、注意障害は脳梗塞による障害であると妻は学び、不安・ストレスを軽減することにつながり、再び面会に訪れるようになった。退院後の生活の再構築に向け、サポート体制を知ることで家族の不安は軽減し、家族はAさんを支援し続けることができた。しかし、長男は面会に来ることはなく、家族内では妻だけが支援者となるため、退院に向けて試験外泊を実施するとともに、地域のサポート体制を十分に準備していくことが必要となる。

評価日:入院2週間後

基本的な看護問題とそれに対する標準的看護計画

症状に関連して生じやすい看護問題と実施する看護ケア

  1. 脳浮腫や出血性梗塞、梗塞巣の増大による症状増悪の危険性がある。 ➡ 意識レベル、バイタルサイン、局所神経症状の観察を継続的に行い、状態の変化を早期に発見し対処する。
  2. 脳梗塞後遺症(意識障害、運動麻痺、高次脳機能障害など)により、ADLが自立されないおそれがある。 ➡ 患者の相場や残存能力、患者本人や家族の希望を考慮し、目標とするADLを設定するとともに、個々の患者に適した動作方法や補助具の使用を検討支援する。
  3. 発症後の過度な安静により廃用症候群を引き起こす危険性がある。 ➡ 体位変換、良肢位の保持、関節可動域訓練を発症当日又は1日目より行う。意識レベル、バイタルサイン、また症状の増悪がないことを確認し、段階的に早期離床を図る。

検査・診断に関連して生じやすい看護問題と実施する看護ケア

  1. 突然の発症のため、検査・診断から治療開始までが急速に進むことで、患者と家族の不安が大きい。 ➡ 血栓溶解療法は、発症後4.5時間以内の実施という制約があるため、患者・家族に対して医師より説明を行った後、早急に検査及び治療が開始される。このため看護師は、医師の説明に立ち会い、必要に応じて説明の補足や確認を行い、不安の軽減に努める。

治療・予後に関連して生じやすい看護問題と実施する看護ケア

  1. 抗血栓療法に伴う出血性合併症(頭蓋内出血、消化管出血など)の危険性がある。 ➡ 特にrt-PA静脈内投与中および後は、意識レベルや麻痺などの神経症状の変化や全身の出血傾向に留意して以上の早期発見・対応ができるよう継続的な観察をおこなう。他科受診時には抗凝固薬または血小板薬を内服うしていることを医師に必ず伝えるよう指導する。
  2. 不適切な生活習慣や治療中断により、脳梗塞再発の危険性がある。 ➡ 患者および家族が、それまでの生活習慣を見直し、再発危険因子を除去する生活を実践できるよう、多職種で協働して支援を行う。

最後に

看護計画の立案って、とっても大変!基本の計画を活用しよう!

実習で接することのできるわずかな時間の中で、患者さんを理解し、患者さんの状況や特性をとらえ、「情報収集」、「アセスメント」、「看護診断」、「看護計画立案」するのは至難の業です。睡眠時間が削られ、心身共にボロボロ、早く週末が来ないかな、、、という学生さんの気持ち、よくわかります。でも、脳梗塞を発症する方は高齢者が多く後遺症を残すことが多いです。生活の再構築を余儀なくされるため、患者さんやそのご家族に対する看護支援が重要になります。

教員にこ
教員にこ

実習で患者さんに集中して関わるためにも、計画の立案に時間をかけすぎず、賢く時短しちゃいましょう。「基本の看護計画」を上手に応用して、患者さんに合わせた計画を立案し、実践に集中しましょう。実践からの学びは貴重です。多くの学びが得られ、充実した実習につながり(実習評価につながり)、自己成長の機会となります。疲れ切ってしまう前に、活用してくださいね。また、実践から看護計画を修正していきましょう。

なお、解剖生理、疾患、看護の基礎知識や患者さんの看護に必要な知識、技術は休日などにしっかりと学習しましょうね。

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