教員歴10年のにこが実施している、1年生へのオリエンテーション内容をお伝えします。
「1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容」
について、シリーズで解説しています。
基本設定は、
基礎看護学実習1(7日間)
実習目標:看護の対象を理解し、看護の実際を知る
実習内容:担当する患者さんとのコミュニケーション
看護師と共に、看護援助を体験する
とします。
学生へのオリエンテーション内容(解説内容)は、以下を予定しています。
今回は、4番目です。
- 「私の実習目標」と「事前学習」の確認と返却
- 教員の自己紹介
- 学生の自己紹介
- グループリーダーとサブリーダーをどのように決めたのか確認
- 学生個々の実習目標と学習内容の発表
- 学生の目標と学習内容に関する意見交換
- 教員にしてもらいたいオリエンテーション内容
- 教員からのオリエンテーション
- 実習初日の予定を計画する
- 「私の実習目標」と「事前学習」の再提出
- 技術練習について
- グループの合言葉の確認
追加もあり得ます。(笑)
なお、それぞれの看護学校や大学によって、
また、先生方の考え方によって、
オリエンテーション内容や方法は様々だと思います。
これは、教員にこが、10年間オリエンテーションを続けてきた中での、
私なりの工夫が盛り込まれているものです。
私自身の失敗や、体験に基づいたものなので、
参考までに、ということで、お願いいたします。
私が大事だと考えている以外にも、必要なことがあるかもしれませんが。
私の気づきを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。
実習開始前までに、大まかなチームビルディングをしておく。
前回は、学生の自己紹介について解説しました。
実習グループメンバー間でお互いの好きなこと・得意なことを共有しておくことは、
自分の得意を活かした行動につながり、お互いを率先してサポートをすることにつながります。
また、出来ていないことは指摘しやすいのですが。
できていることを認めて、それを大事に育てていく関わりの方が、長い目で見たときに、
学生の成長につながっていると考えます。
グループリーダーとサブリーダーをどのように決めたのか確認
リーダーをどのように決めたのか確認しておくことの重要性
グループリーダーとサブリーダーをどのように決めたのか。
自分から立候補したのか、推薦されたのか。
それとも、ジャンケンやあみだくじなどで決めたのか。
その決定方法によって、実習へのモチベーションが、より高まる場合もあれば、
より低くなってしまう場合があるからです。
10年間、1年中ほぼ途切れることなく、1年生から3年生まで実習指導をしてきましたが。
自分から立候補した学生は、何かしらのやりがいや、自己成長を目指していることが多く。
それ以外の学生は、様々な理由で、積極的にはリーダーになりたくないと考えています。
リーダーを立候補した1年生に理由を聞いてみると、
- 高校生活で、学校行事やクラブ活動等、責任者になるのが嫌でリーダーを避けていたけど、リーダーをした方が充実した学校生活を送れたのではないかと後悔している。看護学校では、積極的に行動したいと思ったから。
- みんなをまとめたり、みんなで何かを達成することにやりがいを感じている。
- 私は消極的で、それが課題だと思っているけど、今まで変われなかった。看護学生になったのを機に頑張りたいと思った。
- リーダーをした方が、色々な視点で学べるのではないかと思った。
- 母や姉が看護師で、色々な話を聴き、私も同じように頑張りたいと思った。
- コミュニケーションにコンプレックスを感じている。いろいろな人と、コミュニケーションがとれるようになりたい。
などがあります。
他にも、学生の数だけ様々な理由があるのですが、立候補した学生は、意欲があります。
その積極性や頑張りたい気持ちを大事にする必要があります。
推薦やジャンケンなどで決まった1年生に話を聴くと、
- 初めての実習なので、不安や緊張が大きく、本当はやりたくない。
- 先輩から実習記録が大変だと聞いた。私はあまり成績もよくないし、器用でもないので、リーダーを務められるか心配です。
- ふだん、あまり話したことがない人たちなので、みんなをまとめられるか不安です。
- アルバイトをしているので、早く帰りたい。余計なことはしたくない。
- 先生とやりとりをするだけでも緊張します。看護師さんや指導者さんとのやり取りも、うまくできるか不安です。
などなど。
やはり、不安や緊張があり。
自信がなかったり、他に優先すべき事などがあり。
様々な理由で、自ら進んでリーダーにはなりたくなかったわけです。
学生一人ひとり、リーダーをやりたかった理由、やりたくなかった理由があるので、
その理由に沿った指導や助言、配慮を必要とします。
どんな方法であれ、メンバー合意のもとでリーダーを決めたのですから、
役割が果たせるように、サポートする必要があります。
リーダーとは
グループの目標達成や課題解決に向けてかじ取りを行う人物のことです。
グループメンバーの能力を見極めて適切な役割を与えつつ、自ら先頭に立って実習を行うことで、
グループ内の士気を高め、実習の遂行を目指します。
リーダーの素質には先天的なものもありますが。
多くは学習や在り方を見つめ続けることで、後天的に身に付けることが可能です。
リーダーに向いている学生の共通点
リーダーに向いている学生にはいくつかの共通点があります。
特に重要度の高い共通点は以下の3点です。
目標達成に対して真摯になれる
まず重要なのが、実習への取り組み方です。
リーダーに向いている学生は、目標達成に対して真摯です。
リーダーは必ずしも温和で人付き合いが良くなければならないわけではありません。
リーダーに最も重要なのは、目標達成のために何が正しいのかを考え、ぶれることなく行動することです。
リーダーの中には、メンバーとのコミュニケーションを忘れずに行い、暖かいグループ作りを行っている人もいれば、厳格でストイックに実習を行うグループを形成している人もいます。
それぞれのリーダーは、持ち味は違いますが、「このようなグループにしていきたい」という思いが強いです。
そして、目標達成のために(グループのために)真摯に役割を果たしているのであれば、メンバーはしっかりとついてきてくれます。
役割に対して責任を持って行動できることが、リーダーにとって最も必要な能力といえます。
自分の考えに自信を持ち、一貫した言動ができる
リーダーに向いている学生には、自分の考えに自信を持ち、一貫した発言や行動ができる人が多いです。
一貫性のある言動を行うためには、常日頃から論理的な考え方を実践し、目標達成に必要なことを細分化してわかりやすく整理することが重要になります。
実習では、多くの物事を同時進行で片付けなけれななりません。
しかし、実際に実習を進めていくと、様々なことが複雑に絡み合い、どこから手を付けたらよいか分からないことがあります。
リーダーが、メンバーのふとした発言で右往左往すると、リーダーが頼りなく見えてしまいます。
実習でリーダーを頑張りたい学生に対しては、論理的思考がどの程度身についているのかを確認し、
一貫した言動ができるよう、支援する必要があります。
グループメンバーの弱みよりも強みを大切にできる
メンバーの特性を前向きにとらえることができる学生も、リーダーに向いています。
グループの実習目標を効率的に達成するためには、人の弱点を指摘するよりも強みを活かしたほうが効果的です。
メンバーとしても、自分の強みに合った役割を任されたほうがやる気になります。
結果的に、グループ全体として、実習目標の達成につながります。
加えて、メンバーの強みを活かした采配は、メンバーとの信頼関係の向上にもつながり、団結したグループをつくることができます。
リーダーの経験や自信があまりない学生に対しては、人の弱みよりも強みに着目できるような支援が必要です。
リーダーの4つのタイプ 『PM理論』
リーダーには、周囲を引っ張るヒーローのようなイメージを持つ人や、みんなをまとめる面倒見の良さをイメージする人もいるかもしれません。
しかし、リーダーにはさまざまな考え方があることから、理想的なリーダー像はひとつに留まりません。
リーダーを4つのタイプに分類する「PM理論」という考え方があります。
PM理論とは、1966年に心理学者の三隅二不二氏らが提唱した理論で、リーダーとリーダーシップは「P機能」と「M機能」の2つで構成されているという考え方のことです。
P機能とは : 目的達成機能(Performance function)のこと
組織の目標達成や問題解決をする働きをさします。
たとえば、「カンファレンスに間に合うスケジュールを組む」「リネン交換などの作業をメンバーに割り振って効率化する」「実習記録が進まないメンバーを指導する」などが具体的な行動です。
つまり、先頭に立ってメンバーを引っ張る力が強いタイプであり、皆が想像するリーダー像といえます。
M機能とは : 集団維持機能(Maintenance function)のこと
メンバーとの人間関係を良好に保ち、組織の雰囲気作りをする働きのこと。
M機能の行動は、「メンバー一人ひとりとコミュニケーションを図る」「人間関係のトラブル解決に関わる」「メンバーが交流する場を設ける」「メンバーの労をねぎらう」などがあります。
メンバーをひとつにまとめて統率を図るためには必要不可欠な能力です。
P機能とM機能をどちらも持っている人が、「理想のリーダー」と考えるのがPM理論の本質です。
P機能とM機能の高低差により、次の4つのタイプに分類されます。
【PM型】(P機能、M機能ともに大きい)
両方の能力が備わっており、組織をまとめながら目標を達成できる、理想像にふさわしいリーダータイプ
【Pm型】(P機能が大きくM機能が小さい)
目標を達成できる反面、組織をまとめる力に欠けるタイプ
【pM型】(P機能が小さくM機能が大きい)
集団をまとめる力はあるものの、目標を達成できないタイプ
【pm型】(P機能・M機能ともに小さい)
目標を達成する力と、集団をまとめる力も弱い、リーダーにふさわしくないタイプ
この4つのタイプを見ると、リーダーになった学生に、必ずひとつはあてはまりませんか。
リーダーには、どちらかが備わっているのではなく、両方がバランス良く備わっていることが重要です。
リーダーの役割を学ぶ
学生一人ひとり、実習グループのリーダーをやりたかった理由、やりたくなかった理由があります。
リーダーをやりたかった人も、やりたくなかった人も。
実習でリーダーという役割をまかせられたら、それが全うできるように努力すべきです。
なぜなら、看護師はチームで看護実践をしており、一人ひとりがリーダーシップ・メンバーシップを発揮することが求められているからです。
看護学校の1年生で、実習も初めてです。
性格的にリーダーの資質を持っていたとしても。
不安や緊張の中で、リーダーシップを発揮するのは難しいです。
また、PM理論を見てもらうと、リーダーにも4つのタイプがありました。
学生一人ひとり、また、その時その時の状況に応じたリーダーの在り方が求められます。
(目標達成ばかりを意識して、メンバーの努力や苦労をねぎらうことがなかったら、そのリーダーは孤立してしまいますよね。また、仲良くすることだけに一生懸命で、目標が達成できなかったら、残念な実習になってしまいます。)
教員は、学生の主体的なリーダーシップ、メンバーシップを大切にしながら、
学生自身が自分の強みを伸ばし、自分の弱みを客観的に把握して成長につなげられるよう支援していきたいですね。
また、学生がリーダーシップを発揮するには、
- 実習記録などの学習支援
- 時間管理の指導
- 個人面接
- 人間関係調整
- コミュニケーション方法指導
などの、様々な視点からのアプローチも必要になると思われます。
まとめ
学生は、実習リーダーをするのを嫌がりますが、学年が上がるにつれて、自分からリーダーをやりたいと立候補する学生がでてきます。
実習を重ねるうちに、リーダーシップが苦手な自己の傾向や課題に気づくからでしょう。
少しでも成長していきたい、理想とする看護師になりたいという意欲の表れです。
3年生の最後の方の実習になると、何回もリーダーを経験したことのある学生がでてくるので、
私は、「リーダーを学ぶ機会を、あまりリーダーをやったことのない学生にも与えてください。」と、
グループ全体になげかけます。
前回も述べましたが、リーダーシップをとれる学生は、メンバーシップもとれます。
また、メンバーシップをとれる学生は、リーダーシップもとれます。
ただ、PM理論のように、リーダーにも様々な持ち味があります。
学生の個性や長所を大事にして、リーダーとしての成長を支援していきたいですね。
次回は、「学生個々の実習目標と学習内容の発表」について解説します。
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