基礎看護実習、初日の指導案を解説します。
基本設定は、
基礎看護実習1(7日間)
実習目標:看護の対象を理解し、看護の実際を知る
実習内容:担当する患者さんとのコミュニケーション
看護師と共に、看護援助を体験する
実習時間:8時30分~16時30分(昼休憩1時間)
です。
それぞれの看護学校や大学によって、先生方の考え方によって、実習での指導方法は様々だと思います。
これは、教員にこが、10年間実習指導を続けてきた中での、私なりの工夫が盛り込まれた指導方法です。
私自身の失敗や体験に基づいたものなので、参考までに、ということで、お願いいたします。
私が大事だと考えている以外にも、大切なことがあるかもしれませんが。
私の学びを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。
「病院到着から病棟オリエンテーション開始」までの指導案
私は、実習直前までの教員のオリエンテーションで、学生がどれだけ基礎看護実習の目標や内容が理解できたか。
準備ができたかどうかで、実習の到達度は5割以上行くのではないかと思っています。
なので、実習初日は、基礎看護学担当教員のオリエンテーション、そして、実習直前までの実習指導担当教員(私)からのオリエンテーションを、学生がどれだけ理解できていて行動化できるか、確認する一日になります。
病院内に入ってから、実習病棟到着まで
私が勤務している看護学校は、病院に併設された学校なので、学校内で実習用のユニフォームを着用できます。
そのため、病院内に入るときには、すでにユニフォーム姿です。
入院している患者さんや、受診に来られた方。面会に来られた方からすると、
学生はユニフォームを着ているので、医療スタッフの一員にしか見えません。
学生が、医療従事者の一員として、自覚を持った行動ができているかどうか。
病院内に一歩入ったその時から、時間をかけて実習オリエンテーションを行ってきたことの成果が問われるわけです。
もちろん、不安や緊張、これから始まる実習への期待もあるので、学生のテンションは高いです。
でも、半年間、看護学生として学んできたわけですから、学生としての自覚を持った行動をすべきですし。
病院スタッフのみなさんからも、そのような姿を期待されています。
はしゃぎそうな学生がいたとしても、グループの中で注意し合いながら行動できればいいのです。
実習初日。
実習担当教員である私も、学生と一緒に病棟に行ける時は、一緒に病棟に行きます。
一緒に行くときは、学生リーダーが先頭を歩くように促し、私は一番最後から、学生とは少し距離をおいて歩きます。
- 廊下の端を、一列になって歩いているか。
- 患者さんなどに配慮し、エレベーターよりも階段を優先して移動しているか。
- 患者さんや病院スタッフ、すれ違う人に気持ち良い挨拶をしているか。
- 私語はないか。
など、学生の様子を見ながらついていきます。
総合病院など、大きな実習施設では迷うこともあるため、たどり着けるかも、気にします。
以前、私よりも先に学校を出発したはずの学生が、実習病棟に到着していなかったため、慌てて探したことがありました。
また、看護部長さんに挨拶してから病棟に向かう時など、場所がわからずに迷うこともあり、実習前日に学生と一緒に場所を確認しに行ったこともあります。
実習が開始し、歩ける患者さんと散歩に行った学生が、患者さんと一緒に迷子になっていたこともありました。
集団で歩いていると迷わなくても、1人で歩くと迷ってしまう学生もいます。
そのため、1年生の実習初日は、まずは病棟までの道のりを覚えることも大切です。
あとは、階段を使用して病棟まで行く際、息が苦しいまま病棟に入ってしまうと、緊張感が増してしまいます。
病棟に入る手前の辺りでいったんとまるよう指示し、学生全員に深呼吸を数回促し、「笑顔で挨拶」を意識させてから病棟内にはいるようにしています。
基本的に、学校を出発してから病棟まで、学生に指示したり、注意することはありません。
見守るのみです。
「私語を注意された」、「広がって歩いているのを注意された」、「大きな声で挨拶できなかった」、「迷ってしまった」、「時間通りに病棟に到着できなかった」などのちょっとしたミスが沢山積み重なると、モチベーションの低下につながります。
そうならないように、オリエンテーションをしています。
初めての実習が、気持ちよく開始できるように支援したいですね。
もちろん、実習の初日に学生と一緒に病棟に行けないことも多々あります。
その時は、学生を信じるほかありません。
実習指導に行った時に、
「朝、時間通りについた?大丈夫だったかな?」
と、学生に確認する程度です。
また、実習指導者さんに、学生の朝の様子を確認します。
病棟での挨拶
ナースステーションの入り口で、リーダー学生が、中にいるスタッフに向け、
おはようございます。〇〇看護学校の1年生〇名です。
本日から基礎看護実習でお世話になります。
実習指導者の〇〇さん、いらっしゃいますか。
と元気な挨拶ができ、
ナースステーション内の看護師さんたちが、
「おはようございます。」
「学生さん、来たよー。」
「(指導者の)〇〇さーん。」と、反応してくれたら、大成功です。
私は、心の中で、ガッツポーズです。よくやった!!つかみはOK。
リーダーさん、勇気が出せました。
指導者さんがいらっしゃったら、
おはようございます。〇〇看護学校の1年生〇名です。
リーダーの〇〇です。
本日より〇月〇日まで、基礎看護実習のご指導よろしくお願いします。
実習の目標は、「看護の対象を理解し、看護の実際を知る」です。
患者さんとのコミュニケーションや、看護師さんと一緒に看護援助を体験しながら、学ばせていただきます。
緊張していますが、頑張りたいと思います。
ご指導よろしくお願いいたします。
と、あいさつします。
他の学生も、リーダーに続いて「よろしくお願いたします。」と、挨拶ができれば、ほっと一安心です。
よかったー。
みんな、よくやった!!
(心の声)
毎回、ここが本当に緊張します。指導したことの成果が得られました。
あとは、指導者さんの指示に従って、
- 病棟の看護師長さんに挨拶
- 朝のミーティングで病棟の皆さんに向けた挨拶
が同じようにできれば、OKです。
学生個々の看護師さんへの挨拶について
学生一人ひとりに担当患者さんが決まっていた場合、
その患者さんの担当看護師さんにも、学生は朝のうちに挨拶をしなければなりません。
学生の「本日の目標」と、「行動計画」をきちんとお伝えし、担当看護師さんの一日の計画に組み込んでもらう必要があるからです。
今日から〇号室の〇〇さんを担当させていただきます。
学生1年の〇〇です。
今日の目標は、「オリエンテーションや患者さんとのコミュニケーションから、患者さんの療養環境や療養生活を理解する。」です。
午前中は、指導者さんからのオリエンテーションを受け、患者さんとのコミュニケーション、カルテからの情報収集をしたいと考えています。
午後は13時からの実習になりますが、担当患者さんのバイタルサイン測定や、看護援助などがありましたら、見学に入らせていただきたいです。
よろしくお願いいたします。
とってもいいですね。GOOD!
このように、朝のうちに看護師さんに目標と行動計画を伝えておくと、
この看護師さんは、
この学生さんは、今日から患者の〇〇さんを担当するのね。
午前中は、私と行動はしないけど、午後に患者の〇〇さんの援助があったら、学生さんに声をかけて、一緒に行動しないといけないのね。
チームの看護師にも伝えておかないと、気を利かせて、援助をどんどんしちゃうかも。
と、学生の予定を自分の予定に組み込み、配慮してくれます。
でも、看護師さんの忙しそうな様子についていけず、朝のうちに担当の看護師さんに声をかけられないと、
困ったー。
今頃言われても、もう、〇〇さんのバイタルサイン測定しちゃったし、援助も全て終わってしまった。
歩ける患者さんだからな・・・。
コミュニケーション、頑張ってもらうかな・・・。
といったことになりかねません。
1年生の初めての実習なので、担当する患者さんは、会話ができ、日常生活動作も自立されている方が多いかもしれません。
もともと、「初日はコミュニケーションを頑張る」計画であれば、問題ないのですが。
「看護援助を通して理解を深める」ような目標であれば、目標の達成は難しくなるかもしれません。
ただ、実習初日で、朝から忙しそうにナースコールの対応をしたり、薬剤の準備をしている看護師さんに声をかけるのは、教員でも勇気が必要です。
また、看護師さんの顔と名前も一致しません。
ここは、教員と指導者さんの腕の見せ所です。
学生一人ひとりに声をかけ、
「あなた、看護師さんに目標と計画伝えられた?看護師さんになんて言われた?‥じゃ、大丈夫だね。」
「あなたはどう?・・まだ言えてないの?看護師さんの名前は、わかった?どの看護師さん?
・・わからないの?一緒に探すよ!!いくよっ! ・・ほら、いたよ。挨拶いけそうかな? ・・いっておいで。 ・・伝えてこれた?看護師さん、なんて言ってた? ・・大丈夫ね。」
「あなたは、看護師さんに目標と計画、伝えられた? ・・まだ?忙しそうで、いったり来たりしている看護師さん? ・・・。指導者さんが、一緒に行ってくれるって。良かったね。行っておいで・・!」
といった感じです。
教員も、指導者さんも、学生の世話を焼きすぎですかね?
でも、病棟の朝は忙しいですよね。
そして、看護師さんたちが、学生よりも患者さんを優先するのは当たり前のことです。
でも、そのあたり前のことが、1年生にはわかりません。
学生が、いくら学校で「患者さん優先」、「個別性のある看護」、「思いやりのある態度」などと学んでいても。
実習初日の朝、なぜ看護師さんたちが忙しそうにしているのかが理解できず。
ナースコールの意味やモニターのアラームの音の意味がわからず。
学生が頑張って看護師さんにアプローチするけど、
「ちょっと待ってて、」と言われて何分も待たされ。
そして、「看護師さんに無視された・・。」という思いを学生は抱く。
このような、最悪の循環を断ち切るために、教員や指導者さんがいると思っています。
学生にとって、実習環境を整えるとは、このような事も含まれます。
実習を重ねていけば、看護師さんの忙しさの意味がわかり、
看護師さんへ声をかけるタイミングもわかってきます。
まずは、学生と看護師さんとの関係性づくりの手助けができるといいと考えます。
このような働きかけは、実習指導者さんにとっても、学生の実習満足度を上げるうえで重要なことだといえます。
「病棟オリエンテーションを受ける」からの指導案は、次回に。
次回は、「病棟オリエンテーションを受ける」ところからの指導案になります。
内容は、以下を考えています。
病棟オリエンテーションを受ける
- 場所の準備
- 自己紹介
- 病棟紹介
- 病棟案内
- 私物の管理
- 個人情報の管理
- 感染対策
- 危機管理
- 体調管理
- 質問・体調確認
「病棟のオリエンテーションを受ける」だけで、このボリュームですか?
と思うかもしれませんが、1年生の初めての実習だからこそ、しっかりとおさえておかないと大変なことになります。
コロナ禍の状況もあり、感染対策ひとつ、手を抜けません。
SNSが発達してきた今だからこそ、情報管理も、重要です。
でも、初めに徹底しておけば、次からは格段に楽になります。
学生一人ひとりが、自分の事として考え、行動できるように支援していきたいですね。
まとめ
実習生の病院入り口から病棟オリエンテーション開始直前までの指導案でした。
そこに、指導案が必要ですか??と思うのですが、私の覚え書きのようなものです。
教員1~2年目の頃は、何も考えていなかったのですが。
近隣住民や病院スタッフの皆様のお叱りを受けたり、お褒めの言葉を頂いたり。
学生の様子を見るなかで。
何事も、最初の教育的関わりが肝心なんだなあと思うようになりました。
そして、気持ちの良い挨拶、第一印象は、どんな人間関係においても基本だということも、よくわかりました。
また、言葉や知識ではわかっていても、実際にその場やその時になると言葉がでなかったり、行動できなかったりするということもよくわかりました。
学生と看護師さん、学生と指導者さん、学生と患者さんの間で、どのようなやり取りがされていたのか。
その場で実際に自分の眼で見ないと、自分で気づかないと、学生にとって適切な指導にならないことも学びました。
学生は、出来ないことも多いですが、素直に様々なことに気づき、吸収します。
学生の学びが教員の学びにもつながっています。
謙虚な気持ちで、学生と向き合っていきたいですね。
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