その12:1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容①

看護教員にこの実習指導の実際

教員歴10年のにこが実施している、1年生へのオリエンテーション内容をお伝えします。

今回からは、

「1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容

について、シリーズで解説していきたいと思います。

基本設定は、

基礎看護学実習1

実習目標:看護の対象を理解し、看護の実際を知る

実習内容:担当する患者さんとのコミュニケーション

     看護師と共に、看護援助を体験する

とします。

学生へのオリエンテーション内容(解説内容)は、以下を予定しています。

  1. 「私の実習目標」と「事前学習」の確認と返却
  2. 教員の自己紹介
  3. 学生の自己紹介
  4. グループリーダーとサブリーダーをどのように決めたのか確認
  5. 学生個々の実習目標と学習内容の発表
  6. 学生の目標と学習内容に関する意見交換
  7. 教員にしてもらいたいオリエンテーション内容
  8. 教員からのオリエンテーション
  9. 実習初日の予定を計画する
  10. 「私の実習目標」と「事前学習」の再提出
  11. 技術練習について
  12. グループの合言葉の確認

追加もあり得ます。(笑)

なお、それぞれの看護学校や大学によって、

また、先生方の考え方によって、

オリエンテーション内容や方法は様々だと思います。

これは、教員にこが、10年間オリエンテーションを続けてきた中での、

私なりの工夫が盛り込まれているものです。

学生からは、

「先生、熱い、熱すぎるよ。」

「患者さんよりも、先生に寄り添えるか、心配。」(苦笑)

と、言われた時期もありました。

(年と共に、自分を客観視できるようになり、穏やかになりました。たぶん。)

私自身の失敗や、体験に基づいたものなので、

参考までに、ということで、お願いいたします。

私が大事だと考えている以外にも、必要なことがあるかもしれませんが。

私の気づきを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。

看護教員になったばかりの先生方、実習指導者になったばかりの看護師さん。

きっと、自分が学生だった時との違いを学生に感じ、

戸惑っていらっしゃる方もいるかもしれません。

私も教員になりたての時は、学生の考えていることがわからず、

指導に悩んでいました。今も、悩みながら指導しています。

指導のヒントや指導案のヒントになったら、嬉しいです。

「私の実習目標」と「事前学習」の確認と返却

うちの看護学校の場合、各領域(成人・老年・基礎など)の担当教員が、

担当する領域の実習オリエンテーションを学年全体に行います。

基礎看護学領域の実習の場合は、基礎看護学担当の教員が、まず、

1年生全体にオリエンテーションをするわけです。

学生には、事前に

「実習要綱を熟読してオリエンテーションに参加するように」と、

指示がされているので、

基礎看護学担当教員がオリエンテーションする時には、

学生は、「こんな感じの実習なんだ。」と、理解しているはずなのですが。

・・・。

とにかく、学生は、実習要綱を読んできていません。

読んできているのは、本当に真面目な子、素直な子で、少数です。

ほとんどの学生は、教員からのオリエンテーションの時に、理解すればいいと思っています。

実習指導担当教員の出番は、領域の先生のオリエンテーションが終わった数日後です。

基礎看護学領域の担当教員から、「私の実習目標」を書き、

自分が実習に行く病院施設をふまえた「事前学習」をまとめて、

〇日までに実習指導担当教員まで、提出してください。と、指示があります。

なので、私は、学生からの提出を待ちます。

うちの学校の場合、一人ひとりが教員に提出をするのではなく、

グループのリーダーとサブリーダーが、提出物を集め、

実習指導担当教員に、挨拶とともに提出してくれます。

リーダーになりました、〇〇です。

よろしくお願いします。

メンバー全員の「私の実習目標」と「事前学習」を提出しに来ました。

ご確認の上、ご指導をよろしくお願いします。

と、緊張しながらも、挨拶してくれます。かわいいです。

初めての実習なので、全員提出することが多いのですが。

たまに、提出が遅れる学生がいます。

リーダーの学生が、申し訳なさそうに、

「△△さん、今日は提出ができないといっていました。すみません。」というのですが。

リーダーの不備ではありません。

私は、リーダーの学生に、

教員にこ
教員にこ

あなたが謝る必要はないですよ。

あなたはきちんと役割をはたしています。

あなたにお願いするのは申し訳ないのだけど、△△さんに、私のところに来るよう伝えてください。

と言います。そして、△△さんが来たら、

教員にこ
教員にこ

あなたの不備を、リーダーが代わりに謝罪していましたよ。

自分の不備を、誰かに謝罪させるのは、違うと思いませんか。

このような場合は、あなたも、リーダーと一緒に来て報告と謝罪ができるとよかったですね。

学生としてだけでなく、社会人としても大事なことですよ。

と、指導します。

もちろん、なぜ、今日提出ができないのかも確認し、次回から、このような状況にならないためにはどうしたらよいか、考えてもらい、自分の言葉で表現してもらいます

そして、何月何日の何時に提出するのかを、はっきりとさせます

なぜ、このようなやりとりを長々と書いたのか?と思うかもしれませんが。

私の中では、すでに実習指導が始まっているのです。

何事も最初が肝心です。

学内にいるときから、看護師を育てているという意識で、学生と関わっています。

(熱すぎますかね、指導が。)

「私の実習目標」で、何を確認するのか。

「私の実習目標」は、A4のプリントです。記入すべき内容は

  1. 今回の私の実習目標
  2. どんな看護師になりたいのか
  3. 2のような看護師になりたいのはなぜか
  4. 1を達成し、2のような看護師になるために、今回の実習で意識して取り組むことは何か
  5. 実習までに、準備しておくことは何か

です。

2番、3番は、学生の考えを素直に書いてもらえばよい内容です。

信頼される看護師になりたいです。

以前入院した時に、一回も点滴を失敗しない看護師さんがいました。

患者さんに疼痛を与えないような技術力のある方で、プロだなあと思って感激しました。

優しい看護師になりたいです。子どもの頃、入院していた時に、寂しくて泣いていたら、そばに座ってお話を聞いてくださいました。不安を受け止めることのできる、優しい看護師になりたいです。

一年生なので、こんな考えを書いてきます。純粋で、かわいいです。

学生の顔と名前が一致しないので、写真入りの学籍簿と照らし合わせながら。

なるほどな、こんなことを考えているんだな、と思って読みます。

問題なのは、1番、4番、5番です。

1番については、実習の要綱を読みこみ、基礎看護学領域のオリエンテーションを受けていれば、きちんとかけるはずです。

今回の実習は、

実習目標:看護の対象を理解し、看護の実際を知る

実習内容:担当する患者さんとのコミュニケーション

看護師と共に、看護援助を体験する

でした。なので、

1番の「今回の私の実習目標」は、看護の対象を理解し、看護の実際を知ると、実習目標そのままでもいいのです。

ようは、この実習目標の達成を意識した私の目標になっているかな?ということです。

4番の「1を達成し、2のような看護師になるために、今回の実習で意識して取り組むことは何か」では、

患者さんの療養生活上のつらさを理解するために、4側面を意識して会話をする。また、積極的に看護師さんにアプローチして看護援助を体験する。

など、実習目標を意識して書いてあれば、合格です。

5番は、「実習までに、準備しておくことは何か」なので、

患者さんの苦痛を4側面からとらえられるように、授業内容を復習し、整理する。会話に活かせるようにする。

実習病棟に多い疾患について、学習する。

今まで習ってきた看護技術の練習をする。患者さんを想定して援助の工夫や声かけを考える。

などです。1番、2番に書いたことが達成できるように、4番と5番が関連して書かれていればOKです。

学生の中には、

実習を休まないように頑張ります。

笑顔が素敵な看護師になりたいです。

いつも笑顔だと、患者さんも元気になれるからです。

体調を整えて休まないようにします。

実習病棟の特徴を調べておきます。

これじゃ、ダメですか?? といった学生もいます。

学生の思いは大事にしてあげたいですが。

実習目標をふまえていないですよね。

実習でやるべきこと、学ぶべきことを理解していない学生は、

実習中も、自分で考える事が無く、指示があるまで動くことができません。

病棟内をふらふらと漂ってしまい、壁の花になってしまいます。

周りの学生に合わせ、同じように患者さんと話したり、援助の体験をしているつもりでも。

学びに深みがありません。

なので、実習でやるべきこと、学ぶべきことを理解していない学生には、

教員にこ
教員にこ

実習要綱を読みこんで、「私の実習目標」を書き直し、プリントは、再提出してくださいね。

と、伝えます。

「事前学習」で何を確認するのか。

正直、事前学習は何の意味があるか分からない。

と思っている学生が多いかもしれません。

内容も多く、勉強方法が分からず、教科書を丸写ししたり、

資料をコピーするだけという学生も中にはいます。

事前学習は、実習をスムーズに進めるために必要な勉強です。

看護学生の実習は、勉強を教えてもらう場所ではありません。

授業や演習で身につけた知識や看護技術を、患者さんへの関わりに活用し、より看護の学びを深める機会になります。

患者さんは、病気を治療するために入院しているのであって、看護学生のために入院しているわけではありません。

看護学生の実習という形の学習を理解していただいた上で、学習に協力していただいています。

患者さんを相手に自分の知識の確認をしたり、技術の練習をするといった考えは、大変失礼です。

不十分な事前学習によって、患者さんの体調の変化を見逃したり、良かれと思って実施した援助で安全を損なう恐れがあります。

十分な知識や技術を身につけたうえで実習に行く必要があります。

私が事前学習を確認するポイントは、「実習で活用できるかどうか」です。

実習の事前学習を効率的にまとめる方法についてアドバイスします。

実習の事前学習は項目別にまとめるのがポイント

解剖生理の基本

解剖生理は1年生で学習する基本知識ですが、疾患を理解するためには欠かせない知識です。

解剖生理をおさえておくと、疾患を習っていなかったとしても、身体への影響や全体のつながりが分かるようになります。(正常と異常の判断ができますね。)

最低限必要な解剖と生理は頭に入れておくように、教科書や参考書を見ながらまとめる。

イラストを描きながら進めると、見返した時に理解しやすい。

イラストが苦手という人は、教科書や参考書のイラストをコピーしたものをノートに貼り付けて勉強する方法もある。

メジャーな疾患

担当する患者さんの情報は、実習が始まるまで分からない場合が多いです。

実習施設や病棟に多いメジャーな疾患について押さえておきましょう。

実習では、教科書に載っているメジャーな疾患を受け持つことが多いです。

メジャーな疾患

肺炎
脳梗塞
脳出血
虚血性心疾患
認知症
高血圧
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
胃ガン
乳がん
大腿骨骨折
脊椎間狭窄症

特に、高血圧や糖尿病は既往歴に多い疾患なので、どの領域の実習に行っても遭遇することがあります。合わせて学習しておきましょう。

1年生は、初めての実習なので、病棟に多い疾患名を羅列しますが、

どんな疾患か、症状か、どんな治療や看護が必要なのかを学習していない場合があります。

実際に患者さんを目の前にしたときに、症状を一つも問診できなかったり観察できないようでは困りますね。

実施される検査

実習中は患者さんのケアだけでなく、検査について見学をすることもあります。

実施される検査は、受け持ち患者さんの状況によっても変わってきますが、

メジャーな疾患と合わせて勉強することが大切です。

検査項目を勉強するときは、以下のポイントを押さえておきます。

検査の目的
検査の内容
検査の方法
検査結果の見方

患者さんに「なぜ、その検査が必要なのか」「なぜ、その検査を実施したのか」という、

という目線で検査目的や内容について理解しておくことが必要です。

観察項目

実習では、看護師さんとともに、受け持ち患者さんにバイタルサイン測定や清潔ケアなどを行います。

ケアや処置を実施する時には、必ず観察を行います。

看護技術別に観察項目をまとめておくと、実習をスムーズに進めることができます。

実習中に実施することが多い看護技術

清潔ケア
バイタルサイン
食事介助
体位変換
歩行介助
移動・移乗

また、病態ごとの観察項目もまとめておくと便利です。

特に糖尿病、高血圧は既往歴に多い疾患なので、観察項目をまとめておくと便利です。

看護のポイント

看護のポイントは、受け持ち患者さんにケアを実施するときの注意点などです。

例えば、大腿骨骨折の患者さんの場合は、骨折部位を考慮した方法で実施することが必要になります。

また、シャントを増設している患者さんの場合は、シャント側での血圧測定は禁忌などの決まりがあります。

看護を安全に行う上で大切になるポイントであり、必ず押さえておきたい部分です。

上記に挙げたポイントは、看護の参考書や教科書に書いてあるので、しっかり理解してまとめておきましょう。

教員にこ
教員にこ

事前学習がどれだけ出来ているかで、実習の理解度も変わってきます!

事前学習はめんどくさいと思っている学生も多いと思います。

事前学習でどれだけ勉強が出来ているかで実習の理解度や進め方が変わってきます。

出来れば実習に行きたくないと思っている人も多いですが、

実習をスムーズに進めるためには効率的な事前学習が必要になります。

事前学習を提出してもらい、内容を確認すると、学生全員が、再提出になります。

ほぼ全員が、

学習の仕方がわからない、まとめ方がわからない。

先生、正解を教えてください・・・。(泣)

という状況になります。

なので、事前学習の考え方、まとめ方、ポイントを全員に指導することもあります。

初めての実習なので、要領がわからないのは当たり前です。

実習に行く前に、「実習に行きたくない」に、ならないようにしたいですね。

まとめ

今回は、

  1. 「私の実習目標」と「事前学習」の確認と返却

の解説をしました。

とにかく、大事なのは準備です。

「十分に準備ができたから、実習が楽しみ!」とまではいけなくとも、

「それなりに準備ができたし、みんなもいるから、なんとかなるかな。」と、

学生が思えることを目指したいですね。

学生がのびのびと実習できるための環境づくり、支援をしたいです。

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