その19:1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容⑧

看護教員にこの実習指導の実際

教員歴10年のにこが実施している、1年生へのオリエンテーション内容をお伝えします。

「1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容

について、シリーズで解説しています。

基本設定は、

基礎看護学実習1(7日間)

実習目標:看護の対象を理解し、看護の実際を知る

実習内容:担当する患者さんとのコミュニケーション

     看護師と共に、看護援助を体験する

とします。

学生へのオリエンテーション内容(解説内容)は、以下を予定しています。

今回は、番目です。

  1. 「私の実習目標」と「事前学習」の確認と返却
  2. 教員の自己紹介
  3. 学生の自己紹介
  4. グループリーダーとサブリーダーをどのように決めたのか確認
  5. 学生個々の実習目標と学習内容の発表
  6. 学生個々の実習目標と学習内容のグループ内での共有と意見交換
  7. 実習直前のオリエンテーション内容①
  8. 実習直前のオリエンテーション内容②
  9. 実習初日の予定を計画する
  10. 「私の実習目標」と「事前学習」の再提出
  11. 技術練習について
  12. グループの合言葉の確認

なお、それぞれの看護学校や大学によって、先生方の考え方によって、

オリエンテーション内容や方法は様々だと思います。

これは、教員にこが、10年間オリエンテーションを続けてきた中での、私なりの工夫が盛り込まれているものです。

私自身の失敗や体験に基づいたものなので、参考までに、ということで、お願いいたします。

私が大事だと考えている以外にも、必要なことがあるかもしれませんが。

私の気づきを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。

実習直前のオリエンテーション内容②

初めて看護実習に行く1年生が、実習直前に、実習担当教員からどんなオリエンテーションを受けたらよいのか、想像できると思いますか?

答えは、NOです。想像できません。

なので、実習指導担当教員は、学生が実習初日の行動をリアルにイメージできるように配慮しながらオリエンテーションすることが求められます。

私はいつも、実習初日の一日の流れに沿って、必要な準備や気をつけることを確認したり、考えてもらっています。

病院施設内での立ち居振る舞い

前回、お伝えするのを忘れていましたが、大事なことなので解説します。

実習中、学生は病院施設内で、学ばせてもらう立場です。

病棟に行くまでに、廊下や売店、外来、検査室など、様々な場所を通ると思いますが、

その間にも、病院施設のスタッフや、患者さん、そのご家族など、様々な方とすれ違います。

その場面で、気持ちの良い挨拶ができるといいなと思います。

また、患者さんとすれ違うにしても、学生は廊下の端を一列になって歩くとか。

朝の忙しい時間帯、検査や手術に行ったりで、エレベーターも込み合います。

患者さんや医療スタッフを優先して、学生は階段を使って病棟まで行くなどの配慮も大事だと思いますし、

学生に教えるべき事でもあると思います。

実習用のユニフォームを着た学生は、患者さんやそのご家族にしてみたら、病院のスタッフの一員に見えます。

学生ではあるものの、医療従事者の一員とした態度や、思いやりを育んでいきたいですね。

教員にこ
教員にこ

少し話はそれますが、私が病棟で実習指導をしている際、退院する患者さんとそのご家族が、ナースステーションに挨拶に見えました。

その患者さんとご家族に対して、病棟の科長さんはじめ、スタッフ全員がその場に立って、笑顔で「退院、おめでとうございます。頑張りましたね。」と声をかけていらっしゃいました。

学生は、我関せずで実習記録を書いていたのですが、

指導者さんが、「学生さんも、立って挨拶をしてね。」と、声をかけてくださいました。

指導者さんは、学生をスタッフの一員として育ててくれているのだと感じました。

ありがたいな、と思いました。

学生には、患者さんやそのご家族には「医療従事者として見られているかもしれない」という自覚を促さないといけないな、と思いました。

病棟の案内

あいさつが終わると、実習指導者さんが、学生が実習をする上で困らないように、必要な説明や案内をしてくださいます。

説明を聞きながら、必ずメモを取りましょう。

病棟の構造や避難経路、多床室や個室、特別室、面会室、処置室、などなど。

病棟の案内をしながら、物品の場所や取り扱い方法などを説明して回ります。

この時必ずメモを取るようにしましょう。

メモ帳に書くとよいこと
  • どの病室に感染性疾患の患者さんがいらっしゃるのか、学生の入退室の可否
  • 清潔ケア物品(清拭・洗髪・足浴など)を用意する場所と物品の取り扱い、片付け方法
  • 汚物室・リネン室の場所、リネン類の持ち出し方法、リネン類・汚物の取り扱い方法
  • 食事の配膳・下膳方法、食事・水分制限などの確認方法
  • 安静度の確認方法
  • その他、必要物品の管理場所と片付け方法

他にも、学生が使用してよいトイレの場所や、カンファレンスを行う場所を確認するとよいでしょう。

また、学生の荷物置き場や、実習中に飲み物を飲みたくなったときはどうすればよいか確認しておくといいでしょう。

ナースステーション内の案内

看護師さんたちは、ナースステーションの中でミーティングをしたり、治療やケアの準備をしたり、記録をします。

1年生の実習内容は、「担当する患者さんとのコミュニケーション」「看護師と共に、看護援助を体験する」でした。

学生のみなさんも、この実習内容を実践するために、ナースステーションの中で、自分で情報を得たり、準備をしなければなりません。

ナースステーションの中にいれば、「担当する患者さんとのコミュニケーション」と「看護師と共に、看護援助を体験する」ができるのでしょうか。誰かが、指示してくれるのでしょうか。

誰も指示してくれません。

指導者さんのオリエンテーションをしっかり聞いて、自分で考えて行動しなければなりません。

担当患者さんからのナースコールがあったか、どこを見ればいいのでしょう。学生がナースコールをとっていいのでしょうか。

患者さんとお話しても大丈夫か、何で確認すればいいでしょうか。そもそも、患者さんのお部屋はどこでしょう。

患者さんの今日の担当看護師さんは誰でしょうか。

患者さんの今日の治療や検査の予定はどのようになっていて、準備はどこにされているのでしょうか。(もしくは、どこに準備すればいいのでしょうか。)

患者さんのバイタルサインや体調を、どこで確認すればいいでしょうか。

さあ、大変です。指導者さんのオリエンテーションを聞き逃さないようにしないといけませんね。

メモ帳に書くとよいこと
  • 学生さんの実習をサポートする実習指導体制、病棟師長・副師長と実習指導担当者の氏名(なお、氏名など、個人情報をどこまで書いてよいのかは、確認してください。)
  • 病棟の特徴・特色 (外科病棟…消化器外科の術前・術後、化学療法など)
  • カルテからの情報収集の仕方(使えるパソコンや、使える時間帯)
  • 学生が担当する患者さんを受け持つ看護師さんの、本日の予定(休憩のタイミングや、検査・治療・ケアなどの予定)をどこで確認するか
  • 実習記録を書く場所、実習記録を提出する場所や時間
  • 個人情報の管理方法
  • 感染防止対策   など

余裕があれば、実習グループメンバーが担当する患者さんがどの病室にいらっしゃるのか。

自分の担当患者さんではないが、珍しい処置や検査があるのかどうかなど。

どこを確認すればわかるのか、質問できるように準備しておくといいですね。

自己紹介

実習指導者さんに、自己紹介していただきます。

学生のみなさんにも、指導者さんに顔と名前を覚えてもらうために、自己紹介の時間を持つことを伝えておきます。

  • 名前
  • 出身地(出身校)
  • 好きなもの、得意なこと

一言で構わないのですが、指導者さんが覚えやすいように工夫してください、と伝えます。

この自己紹介は、私自身も楽しみにしていることです。

なかには、「茶道を嗜んでいる」とか、「ソフトボールの県選抜メンバーです」とか。

学生の意外な一面を見ることができ、多様性があるなあと思います。

もちろん、教員も自己紹介します。

担当患者さんの紹介

この実習期間に担当する患者さんを決めます。

基本的には、学生の人数分受け持てそうな患者さんを、指導者さんが選んでくれています。

その中から学生個々の担当患者さんを決めていくのですが、初めての実習で、学生が自分で決めるのは難しいです。

なので、学生の希望を確認し、教員と指導者で決めていく場合もあります。

事前に担当患者さんの情報を提供してくれる病棟もありますが、なかなか患者さんが決まらず、実習当日に決まる場合もあります。

また、事前に決まっていても、事情があって代わってしまう場合もあります。

そのようなことを、あらかじめ学生に伝えておきます。

実習開始前に患者さんの情報が得られた場合には、

「このような事前学習をしておくといいですよ。」と助言し、事前学習に追加してもらいます。

担当患者さんへの挨拶

指導者さんの案内のもと、担当患者さんに挨拶をします。

患者さんへ挨拶をする際には、「所属」「自分の名前」「受け持たせていただく日数」をお伝えします。

例)

〇〇大学看護学部の△△です。

本日から〇日間実習で受け持たせていただきます。

よろしくお願いいたします。

情報収集

担当する患者さんとコミュニケーションをとるため、明日の予定を考えるために、情報を収集します。

情報収集の方法ですが、「カルテを見る」と、「患者さんとお話しする」の2パターンがあります。

先に患者さんの情報を少しとってから、患者さんのところに行けるのが望ましいですが。

学生さんが見れる電子カルテが少ない場合などは、一部の学生は患者さんのところに行くなど効率よく動けるとよいでしょう。

ただ実習初日で優先順位が高いのは、「患者さんの今日の予定」になります。

患者さんとお話したくても、検査や治療の予定が入っていれば、お話することができません。

また、その検査や治療の時間がわかっていれば、その時間はカルテからの情報収集にあてたり、グループでのカンファレンスの時間にあてられるかもしれません。

病棟の看護も患者さん中心で進んでいきます。

患者さんの予定に合わせて、学生さんも予定を組み立て、情報収集なり行動ができるといいですね。

情報収集する中で、「どうやら患者さん、具合が悪そう。話に行っていいのかな。」とか、

「これから、清拭をするみたい。挨拶はしたけど、いきなり援助に入らせてもらっていいのかな。」など、

戸惑ったり、悩んだときは、すぐに指導者さんや教員に相談するよう学生に伝えます。

学生の状況によって、どんどん体験を進めてもいい場合もあれば、刺激が強すぎて怖くなってしまう場合もあると思うからです。

学生の中には、「前日、全然眠れなかった」とか、「食べれなかった」という子がいます。

実習初日から、飛ばしすぎないようにしましょう。

午前の報告

実習初日で、何を報告すればいいのかわからないと思うかもしれませんが、看護実習では必ず「報告」が必要になります。

お昼の休憩に入る前に、患者さんの担当看護師さんに、必ず「報告」をしましょう。

11時ごろに患者さんに挨拶に行ったのですが、リハビリ後、疲れてお休みになっていると理学療法士さんにお聞きしました。

なので、患者さんに挨拶ができていません。

午後、患者さんにX線検査の予定があるということが、情報収集してわかりました。

13時にお昼休憩から戻ってきますので、戻り次第、患者さんに挨拶し、検査に一緒に行っていいか伺いたいと考えています。

よろしいでしょうか。

 

12時になりますので、お昼休憩に入らせていただきます。

午前中のご指導、ありがとうございました。

午後もよろしくお願いいたします。

といった具合です。

学生さんの報告に対して、看護師さんは、

看護師
看護師

配膳の時に、学生さんが挨拶したいといっていたことを、患者さんに伝えておきますね。

午後の検査には、私が車椅子でお連れしようと思っていたので、お昼休みの時に、車椅子の操作について、復習しておいてください。

一緒に検査に行きましょう。

しっかりと食べてきてね。お疲れさまでした。

などと、学生の報告を聞いて、助言をくださいます。

学生には、自分の実習状況や所在を、常に実習メンバーや教員、指導者さんや患者さんの担当看護師に明らかにしておく責任があります。

いつ、災害が起こるかわかりません。

しばらくある学生の姿が見えず、実習メンバー全員で探したら、トイレで倒れていたということがありました。

また、ある学生は「患者さんと売店に行ってきましたー。」と、笑顔で患者さんと病棟に戻ってきました。

実習を受け入れている病棟の責任として、実習中の学生が、どのような行動をとっているのか把握し、安全に実習ができるよう、環境を整える必要があります。

お昼休憩に入るだけ、と思うかもしれませんが、きちんと自分の実習状況や行動について報告し、場合によっては助言をいただく必要があります。

お昼休憩前の挨拶

一般的にはお昼に行く前に、実習メンバー全員でナースステーション内にいるスタッフに向かって挨拶をします。

忙しくて、学生の方を見てくれない場合もありますが、聞いてくださっていますので、挨拶します。

挨拶の内容は「学校名」「学生の人数」を伝えて、「お昼の休憩に入ります。」と伝えます。

また、何か用事があり、学生がそれぞれ別に休憩に行く場合には、それぞれがナースステーション内で挨拶します。

お仕事中失礼いたします。

〇〇大学、学生〇名、今からお昼の休憩に入ります。

午前のご指導、ありがとうございました。

午後もよろしくお願いいたします。

といった感じです。

看護師さんたちは、「学生さん達、全員休憩に入ったのね。よかったー。」と、ほっとします。

(看護師さんたちは、忙しくて休憩に時間通り入れないこともあります。)

お昼の休憩

指示された休憩場所で休憩をとります。

休憩中ですが、急いで調べないといけなものがある場合には調べたり、カンファレンスを行う場合には、カンファレンステーマを相談する時間になります。

コロナ禍の状況ですので、おしゃべりしながらの食事はやめましょう。

様々な体験をして、メンバーと情報交換をしたいこともたくさんあるとは思いますが、マスクを着用するまでは我慢です。

また、食事前後の感染予防対策を忘れないようにしましょう。

午後の実習に備えて、しっかりと水分をとり、体調を確認することも必要です。

体が熱いなと思ったら、躊躇せず体温を測定しましょう。

興奮しているだけかもしれませんが、感染症の初期症状かもしれません。

とにかく、患者さんの安全を考えて、行動する必要があります。

まとめ

今回は、実習直前のオリエンテーション内容について、解説しました。

実習初日の午前中の動きや注意事項について、丁寧に解説したつもりです。

1年生の初めての実習だからこそ、イメージがわかないからこそ、丁寧に確認する必要があるのかな、と思っています。

実習初日は、実習メンバー全員が、病棟で倒れる事無く、お昼休憩に入れることを目標にしています。

(冗談のように聞こえるかもしれませんが、本気です。)

ここまでオリエンテーションを聞くと、学生たちも、実習をイメージができるようになります。

次回は、「実習初日の予定を計画する」について、解説します。

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