看護実習。朝から元気なく、教員と顔を合わせようとしない学生は要注意。
実習当日の朝、
「おはようございます。」の挨拶が、元気なかったり、
教員と顔を合わせようとしなかったら、要注意です。
実習記録を見るまでもなく、何も記録していないか(ほとんど書けていないか)
何かしらの不安や、自信がないことがあり、
「実習に行きたくない」、と思ってる証拠です。
看護教員にこが、実習指導中、必ず行っていたことの1つは、
朝のうちに、実習指導担当グループ全員の「今日の実習目標の確認」と、「今日の行動計画の確認」をすることでした。
この2点を確認すると、心配な学生か、大丈夫な学生か、だいたい判断することができます。
「心配な学生」は、実習の目的目標が十分に理解できていないため、今日、実習で何をしたらよいかわからない学生です。
「大丈夫な学生」は、実習の目的や目標が理解できていて、今日の行動計画が具体的な学生です。
心配な学生には、4つの傾向がありました。
(あくまでも、看護教員にこの感覚です。)
- 看護師になりたい。真面目で課題もこなすが、成績が伸びない。深く考えることが苦手。
- 看護師になりたい。学力は平均程度以上あるが、勉強は好きではない。課題の取りかかりが遅い。
- 看護師にあまりなりたくないが、資格は取りたい。(親に勧められたから、など)
- 看護師になる自信がない。実習に行きたくない。課題に取り組めない。
今回は、4番目の学生の指導について、私が工夫していたこと等、お伝えしたいと思います。
(3番目までは、前回までのブログをご覧ください。)
心配な学生の傾向④:看護師になる自信がない。
朝から明らかに不安そうにしている。
教員と顔を合わせないようにしている学生Aさんがいたとします。
皆さんなら、どうするでしょうか。
私は、まず、「おはよう。」と声をかけ、
元気ないね。
疲れて、昨日は寝落ちしちゃったかな?
実習記録、難しかったかな?
でも、今日は、頑張って実習に来たんだね。
実習にいけそうかな?
心配な事、ある?
と、聞きます。そして、
「今日の実習目標と、行動計画」を確認し、患者さんの状態に合った、
妥当性のある目標・計画になっていた場合と
妥当性のない目標・計画だった場合(または、書けていなかった場合)で、
対応を変えていきます。
妥当性のある目標・計画になっていた場合
昨日の記録ができていなくても、大丈夫。
これなら、今日実習できると思う。
Aさんの考えた通り、患者さんと関わってみて。
と、笑顔で送り出します。
そうすると、Aさんは、安心した表情になり、
「行ってきます。」と、実習に出かけていきます。
朝から、「記録、何もやってないの?」と、
否定するようなことは、絶対に言いません。
登校してきたということは、不安だったり、自信がなかったとしても。
実習記録がほとんど書けていなかったとしても。
患者さんのために、「今日は、こんな関わりをしたい。」とか、
昨日、患者さんと「一緒に、散歩すると約束した。」とか、
昨日、看護師さんに、「また、明日もおいで。」と励まされたなど。
小さいかもしれないけど、実習に行こうという前向きな気持ちがあったからです。
また、患者さんへの優しい思いや責任感があるからかもしれません。
記録を書く。実習を振り返る。学びを深めることも大切ですが。
まずは、実習に行き、患者さんとの関わりから学ばせてもらうことの方が重要です。
実習場で、その時、その場所で、
その患者さんとの関わりでしか、
その援助の中でしか学べないことがあります。
その貴重な学びを大切にしたいと思っています。
(記録は、後からゆっくりと促すこともできます。)
ただ、またいつ不安になってしまうかわからないので、
つらくならないように。
辛くなっても、軽症で済むように、いくつか予防線を張っておきます。
- 実習グループメンバー全員で、実習目標と計画を共有する。特に自信がなく、不安になっている学生Aさんの目標については、「Aさん、今日は、患者さんのリハビリ後に足浴を実施して、リラックスを促したって。患者さんにとって、とってもいい目標だよね。ただ、実習終了間際になる可能性もあるから、みんなで助け合おうね。」などと、グループダイナミクスをグループ全員に意識してもらう。
- 教員が実習指導に行く時間を伝えておく。必ず時間通りに実習施設に行く。グループメンバー全員に、「実習場所に◇時にいくので、相談したいこととか、援助を見てもらいたい人は、声をかけてください。」と伝えておく。
- 実習グループの学生リーダーに、グループ内で困っていることや心配な事。心配な学生について確認する。学生リーダーの気がかりな学生と、教員が気がかりに思っている学生が同じ(Aさんの)場合は、リーダーの学生に「あなたの行動計画に支障のない範囲で、Aさんに、困っていることがないか、声をかけてもらえる?」とだけ伝えておく。
- 実習施設に行ったら、Aさんの様子をみる。声をかける。表情が良かったら、「良い顔してるねー。」と伝え、不安そうにしていたら、「どうしたの?」と声をかける。話を聴く。
- 実習施設に行ったら、学生リーダーにも声をかける。困ったことや心配な事以外にも、良かったことなどの報告も聴く。
などです。
妥当性のある行動目標・計画であれば、
朝のうちは、このような支援をします。
妥当性のない目標・計画だった場合(または、書けていなかった場合)
Bさん、少し、先生に時間をもらっていいかな。
わからないことや、心配な事、不安な事があって、記録が書けなかったのかな。
この目標や、計画にしようと思ったのは、なぜか、教えてもらっていい?
(もしくは、目標が書けなかったのはなぜか、教えてもらっていい?)
と、声をかけ、時間をもらいます。
実習に行く直前の朝は、学生も忙しいし、教員も何かと忙しいです。
でも、このままBさんを実習に行かせるわけにはいきません。
学生は、実習に行くと、「今日の目標と行動計画」を、看護師さんに発表します。
その時点で、看護師さんにダメ出しされる可能性があります。
また、看護師さんに指導を受けながら、「目標と行動計画」を修正して実習開始になったとしても、
Bさんが、自信をもって患者さんと関わったり、援助をすることは、難しいと思います。
なぜなら、看護師さんに指導を頂いたからと言って、看護師さんの言った内容が正確に理解できるとは限らないからです。
(緊張している、不安でいっぱいな中で指導されても、理解できない可能性が高いです。)
あまり理解できなかったことを看護師さんに伝えて、「わかりやすく教えてもらいたい」と、
学生がアプローチすることは、まずできないですし、
実習終了後、家で調べてくるので、今日のところは勘弁してください。
手取り足取り、一緒によろしくお願いします。・・などとは、絶対に言えないでしょう。
自信がない、不安でいっぱい、緊張している学生は、看護師さんの顔色をうかがいながら、
できるだけ失敗をしないように実習時間を過ごすことで精いっぱいになってしまい、
看護を学ぶということがおろそかになってしまうと思うのです。
また、患者さんと誠実に関わることも難しいです。
実習目標や行動計画が書けない、課題に取り組めない、実習に行きにくい理由については、
様々なことが考えられます。
- 知識がなく、(学習が不十分で、)患者さんの状態や状況が十分に理解できていない。
- 患者さんとの関係性が良くない。患者さんに「来なくていい」と言われた。
- 実習メンバーと比べ、自分はできていないと感じている。劣等感が強い。
- グループメンバーや教員、看護師さんにミスを指摘されるのが怖い。怒られたくない。
- 実習で失敗や間違いを繰り返して自己嫌悪に陥り、さらに実習でミスをしてしまうのではないかと不安。
- この先ずっと、自信が持てないまま実習を続けることになると思うと、将来が不安。
- 看護師に自分は向いていない気がする。
などです。
実習に行く前に、Bさんの不安や困っていることを確認して、
解決の方向性を示し、少しでも安心させる必要があります。
自分に自信が持てず、実習を続けることに自信がなくなってしまうことは、決して悪いことではありません。
実習や患者さんに対してしっかりと向き合っているからこそ、「これでいいのだろうか。」と、湧き上がる感情でもあります。
しかしながら、学生の様子がおかしいと気付いたときに、
「実習中は仕方がない」で済ませてしまうと、後々、症状が悪化し、
精神疾患を引き起こすこともあるため、早く対応する必要があります。
私はまず、
Bさん、昨日は、しっかり眠れたかな?何時間眠ったの?
朝ごはんは食べてきた?何を食べてきたの?
と、確認します。
眠ること、食べることができていれば、一安心です。
実習に行くためには、生活が整っていて、体調に問題がない事が重要です。
眠れていない、食べていないときにはどの程度のレベルで眠れていないのか、食べていないのか、確認します。
Bさん、昨日だけ眠れず、食べれなかったの?
それとも、今週に入ってから?
それとも、実習が始まってからずっとかしら?
実習中の平日だけかな?
実習がお休みの日は眠れたり、食べたりできているかな?
Bさんの返事にもよりますが、1つの領域の実習は3週間程度続きます。
1週間以上、ずっと眠れない、食べれない状況が続いているのであれば、
この学生は、身体的にも精神的にも限界にきているはずです。
実習どころではありません。
私は、講義などの予定がなければ、そのまま面談をする方向で行動を開始します。
実習調整をしている教員や教務主任に、Bさんの実習状況や体調を伝え、Bさんと面談をしたいことを相談して許可を得ます。
実習グループの学生リーダーには、「Bさんと確認することがあるので、先に実習に行ってください。実習施設の指導者さんには、電話でお伝えしておきます。」と指示します。
実習施設の指導者さんには、Bさんの状況を伝え、面談後に実習に行く予定であることをお伝えします。
Bさんには、Bさん自身の体調や生活の事を確認し、何が一番ストレスになっているのか把握します。
また、Bさんに
- 外出がおっくう。
- 意欲がわかない。
- 今まで好きだった物に興味関心がなくなった。
- 趣味ができなくなった。
- 自然に涙が出る。
といった自覚症状はあるのか。
私が力になれることはあるのかを確認していきます。
もしかしたら、実習指導担当の私がストレスの原因になっている場合もあります。
- 先生の言い方がきつい。
- 困っていることに対しての助言がない。
- グループメンバーと比べ指導が少なく、関心を持たれていない気がする。
- 指導が専門的過ぎて、よくわからない。かみくだいてほしい。
- 頑張っても褒めてくれない。
- 実習記録にコメントがない。
などです。
私も、1人の人間です。
性格的に、1人ひとりの学生と、合う合わないがあるのは当然です。
でも、教員として、できる限り学生たちに平等に接していこうとしています。が、
うまくいかないこともあるし、私自身、気づいていないということもあります。
Bさんが、
にこ先生には、少し話しにくいです。
という反応を示して来たら、Bさんに、違う教員に対応してもらおうか、と提案します。
(担任の先生や、保健担当の先生など、Bさんが話しやすい先生を聞きます。)
それでも、難しい場合は、ご家族に辛い状況を話したり相談できているのか確認します。
家族には相談できている、ということであれば、
Bさんの許可を得て、Bさんのご家族に電話連絡します。
(ここまでの経過については、実習調整をしている教員や教務主任にも相談しながら行動します。)
Bさんのご家族と連絡が取れたら、学校でのやりとりを説明させてもらい、
Bさんのご家庭での状況について、差支えのない範囲で確認させてもらいます。
ご家族も心配に思っていること、学校側で配慮してもらいたいと思っていること等あるかもしれません。
(時には、すでに心療内科に受診していて、内服加療中ということもあるかもしれません。)
看護実習は、身体的にも精神的にもストレスがかかる学習形態です。
私は、学校側とご家族と協力し合って、学生が実習で学んでいけるように環境を整えていくことも重要だと考えています。
環境を整えたうえで、学生自身に頑張ってもらいたいこと、
何が学生の課題なのかをわかりやすく伝え、スモールステップで課題を解決できるように支援していきたいと思ています。
教員の私に問題があるのであれば、今までの関わり方を振り返って改善する。
実習グループに問題があれば、グループにアプローチする。
実習施設の看護師さんの関わりに問題があれば、話し合いの場を持つ。
学生と患者さんとの関係性に問題があれば、患者さんに話を聴いてみるなど。
教員としての立場で、支援できることを地道に頑張っていきたいです。
まとめ
学生が、「実習が嫌いのレベル」から、「実習が怖い」になるまえに。
学生が、「看護師になる自信がない」と思う前に。
何らかの学生のサイン(心の悲鳴)に気づいたら、つらい思いをしていたねと、
しっかり受けとめ、対応したいですね。
私が担当した学生の中には、
「一晩中、テキストなどを広げ、実習記録を書こうとしたけど、一言も書くことができませんでした。」
と、泣きながら話す学生もいました。
このような状態になるまで、学生を追い詰める事なく。
3年生の長い実習を支援していけたらと思います。
緊張や不安、自信のなさから、実習そのものに恐怖心を抱いてしまうこともあります。
まずは食事や睡眠がしっかりとれているか確認し、
実習記録が書けない、書いてこなかった理由は何なのか。
ただの寝落ち、怠けでないこともあることを想定しながら、
学生に関わっていきたいですね。
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