看護実習で患者さんと会話するのが苦手な学生さん。効果的な解決策、「聴く力」を高めよう!

看護実習を乗り切る方法

ナースステーションでグループメンバーの学生や教員と会話しているときには、特に問題なく話せているのに、患者さんの前に行くと緊張して話せなくなってしまう学生さんがいます。「コミュニケーションが苦手」と学生さんが言う場合、“なかなか自分から話せない”“話題を見つけられない”ということを、「コミュニケーションが苦手」と表現していることが多いように感じます。

そこで、「積極的に聴く」ことについて、お伝えしたいと思います。

“話せない”のに、“聴く”こと?と不思議に思うかもしれませんが、“自分から何か話さなければならない”と、緊張しているときは、患者さんの言っていること、訴えていることに注意を払えていないことがあります。患者さんのことを理解したいという学生さんの優しい気持ちとは裏腹に、聴く姿勢になっていないかもしれません。

看護の世界では「傾聴」という言葉をよく見聞します。「傾聴」とは、コミュニケーションスキルの一つです。人の話をただ聞くのではなく、注意を払って、より深く丁寧に耳を傾けること。自分の聞きたいことを聞くのではなく、患者さんが話したいこと、伝えたいことを、受容的・共感的な態度で真摯に“聴く”ことを指します。それによって患者さんの理解を深めることができます。

患者さんとコミュニケーションをとるとき、積極的に「傾聴」を心がけると会話がスムーズになります。

患者さんとの会話が得意になる「聴く」コツ3選

患者さんの話に興味を示す

例えば患者さんが「実は(この薬)のことなんだけど…」と話題を振ったとします。このとき、聴き上手な人は

学生えり
学生えり

(この薬)のことですね!その薬、気になっていたんです。

といったように、振られた話題への強い興味を示しながら、患者さんに続きを促しています。つまり、”話を聴きたいオーラ”があるということ。確かに誰かと話しているとき、相手が自分の話に興味を持ってくれていると話し手としても嬉しくなりますよね!患者さんがどんな話題を振ってくるにしても、まずは「話したい」と思ってもらわなければ会話が成立しません。聴き上手な人は、患者さんが「話したい」と思える雰囲気に持っていくことが上手です。

相づちのタイミングを意識する

学生さんが会話の中でよく行う”相づち”。「はい」「そうなんですね」といった相槌を打つことで、患者さんに対して「あなたの話を聞いています」といった意思表示をすることができます。

相槌を打つときはタイミングを意識することで、「話を聞いている」ことをアピールしやすくなります。例えば誰かと話をしているとき、話の途中なのに「そっか」と相槌を打たれたり、もう終わった話題に対して後から「大変だったね」といった遅れた反応をされたら嫌ですよね。話し手としては「本当に聞いてる?」と不安になってしまいます。しっかり患者さんの話に合わせて相槌を打ち、「話を聞いている」ことを伝えましょう。

相づちのバリエーションを準備する

上手な相槌には豊かなバリエーションも大切です。学生さんがずっと「はい」「そうですね」しか言わないでいると、何だか機械的な印象を与えてしまいます。「この話はつまらないのかもしれない…」と患者さんの不安を煽ることもあるかもしれません。そこで、相槌のいくつかのバリエーションを準備しておくと安心です!「はい」や「そうなんですね」の他には、次のような相槌がおすすめです。

  • 「そうですよね」
  • 「大変でしたね」
  • 「いいですね」
  • 「よかったですね」
  • 「そんな事があったんですね」
  • 「お辛いですね」

患者さんとのコミュニケーションが得意になる相づちの具体例

そうですよね

 患者さん「入院前は、好きなものを好きな時に食べていたのに!」

 学生「そうですよね。」

大変でしたね

 患者さん「手術後、5日間も絶食だったんだよ。」

 学生「えーっ!それは大変でしたね。」

いいですね

 患者さん「退院したら、家族全員で温泉旅行に行きたいんだ。」

 学生「いいですね。」

良かったですね

 患者さん「先生が検査結果、良かったって。外出許可がでたんです。」

 学生「よかったですね!」

そんなことがあったんですね

 患者さん「昨日の夜、急にお腹が痛くなって、動けなくなってしまったのよ」

 学生「えぇ!そんな事があったんですね。」

お辛いですね

 患者さん「化学療法で髪の毛が抜けてきてしまって・・。」

 学生「お辛いですね」

学生さんの相槌のバリエーションが豊富だと、”患者さんが一方的に話している”という雰囲気から”学生さんがしっかり会話に参加している”という雰囲気に変わります。

「聴く」ときに気をつけたいポイント3選

返事を射にくい時はおうむ返しをする

患者さんとの会話の最中、どんな言葉を返して良いか分からず無言・・・。こんなときはおうむ返ししてみましょう。

例えば、患者さんが「○○がとてもつらかった」と話したとします。これに対して、どのような返事をしたらよいか分からず無言になってしまうと、逆に患者さんに気をつかわせてしまうことも。それよりも、「○○がお辛かったのですね」とオウム返しをした方が、患者さんの気持ちに寄り添っている感じがしませんか?「この人は自分の話を受け止めようとしてくれている」と患者さんも安心できます。

自分の話とすり替えない

会話の中で主導権を握っているのは、基本的に患者さんです。患者さんの話を遮ったり、話題を横取りする形で自分の話をはじめてしまうと、「この人は自分の話しかしない人だ」と思われてしまいます。

例えば友達が話している最中に、

  • 「私も似た経験が~」
  • 「でも私ならこうするかな」
  • 「それなら私の方がもっと~」

といったように、友達の話を自分の話にすり替えてしまう癖のある人は要注意です。人の話を遮って自分の話をしてしまう人が相手だと、「この人は話を聞いてくれないから」と誰も話をしたがらなくなってしまいます。そうなればコミュニケーションにも支障が出てしまいます。患者さんの話を静かに聴ける学生さんには、自然と患者さんも「今度はこちらが話を聞く番だ」と話す順番を譲ってくれるようになります。聞き手と話し手は交代で行うものですから、患者さんが話しているときは、聴き手に徹しましょう。

返事を否定の言葉から始めない

友達の話に、つい否定的な言葉ばかりを返してしまうことはありませんか?

振られた話題に対する返事を、

  • 「でも」
  • 「いや」
  • 「だって」

のような否定の言葉からしてしまう人は要注意です。聞き上手な人は相手に共感・理解を示すのが上手。つまり否定を示してしまう人は、聞き上手とは真逆にいることになります。

確かに話の内容によっては、「それはおかしい」と否定したくなることもあります。でも、患者さんが話したいこと、伝えたいことを、受容的・共感的な態度で真摯に“聴く”ためには、踏みとどまりましょう。

どんなに否定したくなる内容でも、とにかく最初は「はい、そうなんですね」の言葉から始めてみましょう。共感も理解もできなくて良いですから、とにかく最初に否定的な言葉を返すのだけは避けてください。

どうしても相手を否定すべきときは、まずは肯定的な言葉から始めて、その後から「だけどもしかしたら~」とやんわり意見を言ってみましょう。もちろん、押し付けがましいアドバイスにならないように要注意です。

患者さんの話を、患者さんの立場に立って、患者さんの気持ちに共感しながら理解しようとする。患者さんの話を善悪の評価、好き嫌いの評価を入れずに聴く。患者さんの話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴く。そのことによって、患者さんは安心して話ができるようになります。

学生さんが患者さんに対しても、自分に対しても真摯な態度で、話が分かりにくい時は分かりにくいことを伝え、わかるために努力する。そのような誠実な態度が、患者さんにも伝わり、良好な関係性の構築にもつながると思います。

勇気を出して、患者さんとコミュニケーションをとってみましょう。!

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