実習で看護学生が行う『報告』で最も多いのが、バイタルサインの報告。患者さんのバイタルサインの測定値だけを看護師さんに報告して「他に報告すべきことはありませんか・・?」と、指摘をうけた学生さんも多いのでは?測定値だけでなく、自分が観察した患者さんの状態や患者さんの訴えたことも報告する必要がありますが、看護師さんを目の前にすると、何を報告したらよいかわからなくなってしまうことってありますよね。
そこで、バイタルサインの報告ポイント5つをおさえて、苦手を克服しましょう。
バイタルサインの報告ポイント
正常値と比較してどうか報告する
正常値と比較するといっても、2つの視点があります。
- バイタルサインの正常値と比較する。
- 患者さんのふだんの値と比較する。
高齢の患者さんは、高血圧や糖尿病、心疾患などの既往歴をお持ちの方も多いです。既往歴が多いと、疾患を患っていない方と比べて血圧が高めだったり、脈拍が早かったりと、普段のバイタルサインが正常値から逸脱している場合もあります。そのため、患者さんのふだんのバイタルサインの値と比較して今測定した値がどうなのかを正確に報告しましょう。
症状が安定している患者さんのバイタルサインの報告OK例
〇号室のAさんを受け持っている学生のはるです。
〇時に測定したバイタルサインの報告をしたいのですが、今よろしいでしょうか。
体温37.1度、脈拍82回、リズム不整はありませんでした。血圧は124/72でした。体温は基準値よりもやや高めでしたが、今までの経過を見ると36度後半から37度で経過しています。倦怠感や咽頭痛、咳などの訴えもありませんでした。体調はいつもと変わらないとのことで、問題ないと判断しました。
疾患やそれに伴う症状をふまえた観察を行う
患者さんのもつ疾患や症状について学習し、特徴的な観察の視点を箇条書きにまとめておきます。それをバイタルサインの測定の際に観察したり問診し、一緒に報告しましょう。
例えば、肺炎の患者さんであれば、熱が出ることがあるので、発熱の有無や呼吸状態(咳や痰、呼吸困難の有無など)についても確認します。心疾患の患者さんであれば、脈拍や血圧がとても大事な指標になり、さらに脈の乱れや胸の痛み、動悸がないかなどを知る必要があります。
1週間前に胃がんの手術を受けた患者さんのバイタルサインの報告OK例
〇号室のBさんを受け持っている学生のなおです。
〇時に測定したバイタルサインの報告をしたいのですが、今よろしいでしょうか。体温36.5度、脈拍72回、血圧は110/60、呼吸数22回、SpO296%でした。
息苦しさを確認したところ大丈夫とのことで、呼吸困難の自覚症状はなく、チアノーゼもみられませんでした。創痛については、動くとフェイススケール2だったので鎮痛剤の使用を提案しましたが、安静時は痛みが気にならないとのことで、鎮痛剤は希望されませんでした。
呼吸数が正常値よりも早く、SpO2が昨日よりも低めだったので、術後の呼吸器合併症が気になっています。ベッドで過ごしていることが多いので、合併症予防のためにも創痛の状況を確認しながら離床を促していきたいと思います。
検査、治療の合併症や薬の副作用の徴候も観察する
患者さんが行っている検査・治療についても学習し、考えられる合併症や薬の副作用などを観察し報告します。例えば痛み止めなどの薬を使用している患者さんであれば、吐き気や腹痛などの消化器症状の有無についてたずねます。
肺炎の患者さんのバイタルサインの報告OK例
〇号室のCさんを受け持っている学生のえりです。
〇時に測定したバイタルサインの報告をしたいのですが、今よろしいでしょうか。
Cさんは、「咳と痰がでる。動くと息が苦しくなってくる。体がだるい。寒い。」と訴えられました。
バイタルサイン測定をしたところ、体温38.2度、脈拍92回、血圧は110/58、呼吸数22回、SpO295%でした。
問診中に湿性咳嗽があり、痰を喀出しました。性状を確認すると、黄色の粘稠痰が中等量みられました。呼吸音を聴取すると、右上葉・中葉から副雑音が聞こえました。呼吸状態が不安定で、倦怠感も強い様子だったため、頭部を挙上し安楽な姿勢を整えました。また、悪寒を訴えていたため掛け物を追加してきました。
排泄や睡眠など、生活情報も収集する
バイタルサインを測定しながら、食事や水分がどの程度取れているのか、排尿・排便の状況はどうか、睡眠は十分にとれているか、動きかたに問題はないかなども聞き取っていきます。
肺炎のため持続点滴をしている患者さんのバイタルサインの報告OK例
〇号室のDさんを受け持っている学生のはるです。
バイタルサイン測定を実施したため報告したいのですが、今よろしいでしょうか。
バイタルサインは△△・・・・でした。
解熱剤の使用により多量に発汗しているため、水分をこまめに摂取しているか確認したところ、「水分はほとんど飲んでいない。点滴をしているせいか、トイレが近くて、夜中もトイレに行くからあまり眠れていない。だから飲まないようにしている。」との訴えがありました。
尿の回数は、1日11回(夜間4回)、排便はありません。トイレまで歩行していますが、点滴スタンドを支えに歩行しています。
日中、ウトウトしていることが多いです。
患者さんが困っていることも確認する
患者さんの困りごとを聞き、報告します。例えば、「ご飯が硬くて食べにくい」、「隣の人のいびきがうるさくて眠れない」、「手術が不安」など、ささいな事でも患者さんの訴えに耳を傾けることができるとよい報告ができます。
家族との面会が制限されている患者さんのバイタルサインの報告OK例
〇号室のEさんを受け持っている学生のなおです。
バイタルサイン測定を実施したため報告したいのですが、今よろしいでしょうか。
バイタルサインは△△・・・・でした。
困っていることや不安なことがないかお聴きしたところ、「家族は仕事が忙しく、なかなか面会に来れない。迷惑をかけたくないが、洗濯物がたまってきたので困っている。寒くなってきたから、羽織るものも欲しい。」とおっしゃっていました。
ご家族と連絡を取った方が良いと思ったのですが、どうしたらよいでしょうか。
まとめ 「バイタルサインの報告ポイント5選」
- 正常値と比較してどうか、報告する
- 疾患やそれに伴う症状をふまえた観察を行う。
- 検査、治療の合併症や薬の副作用の徴候も観察する。
- 排泄や睡眠など、生活情報も収集する。
- 患者さんが困っていることも確認する。
以上、5つのポイントをふまえてバイタルサイン測定や情報収集を行い、看護師さんへの報告直前にチェックしましょう。
看護師さんへの報告は緊張するし勇気がいると思います。でも、学生さんからの報告は、看護師さんにとって患者さんのいつもの状態を把握し、いつもと違う様子に気づくことのできる機会になります。チームで一貫したケアにつながることもあります。
『学生さんの力が、患者さんの早期回復につながる』というわけです。患者さんのためにも、苦手なバイタルサインの報告を克服しよう!
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