その14:1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容③

看護教員にこの実習指導の実際

教員歴10年のにこが実施している、1年生へのオリエンテーション内容をお伝えします。

「1年生の初めての実習。学生へのオリエンテーション内容

について、シリーズで解説しています。

基本設定は、

基礎看護学実習1(7日間)

実習目標:看護の対象を理解し、看護の実際を知る

実習内容:担当する患者さんとのコミュニケーション

     看護師と共に、看護援助を体験する

とします。

学生へのオリエンテーション内容(解説内容)は、以下を予定しています。

今回は、3番目です。

  1. 「私の実習目標」と「事前学習」の確認と返却
  2. 教員の自己紹介
  3. 学生の自己紹介
  4. グループリーダーとサブリーダーをどのように決めたのか確認
  5. 学生個々の実習目標と学習内容の発表
  6. 学生の目標と学習内容に関する意見交換
  7. 教員にしてもらいたいオリエンテーション内容
  8. 教員からのオリエンテーション
  9. 実習初日の予定を計画する
  10. 「私の実習目標」と「事前学習」の再提出
  11. 技術練習について
  12. グループの合言葉の確認

追加もあり得ます。(笑)

なお、それぞれの看護学校や大学によって、

また、先生方の考え方によって、

オリエンテーション内容や方法は様々だと思います。

これは、教員にこが、10年間オリエンテーションを続けてきた中での、私なりの工夫が盛り込まれているものです。

学生からは、

「先生、熱い、熱すぎるよ。」

「患者さんよりも、先生に寄り添えるか、心配。」(苦笑)

と、言われた時期もありました。

(年と共に、自分を客観視できるようになり、穏やかになりました。たぶん。)

私自身の失敗や、体験に基づいたものなので、

参考までに、ということで、お願いいたします。

私が大事だと考えている以外にも、必要なことがあるかもしれませんが。

私の気づきを看護教員や看護師さん、実習指導者の皆さんと共有でき、お役に立てたら嬉しいです。

看護教員になったばかりの先生方、実習指導者になったばかりの看護師さん。

きっと、自分が学生だった時との違いを学生に感じ、

戸惑っていらっしゃる方もいるかもしれません。

私も教員になりたての時は、学生の考えていることがわからず、

指導に悩んでいました。今も、悩みながら指導しています。

指導のヒントや指導案のヒントになったら、嬉しいです。

実習開始前までに、大まかなチームビルディングをしておく。

前回は、教員にこの自己紹介について解説しました。

実習グループの学生たちと、信頼関係を構築しておくことは、

学生が担当する患者さんの安全を担保することにつながり、

学生の実習目標の達成にも大きく影響を与えます

そのため、チームビルディングの一環として、

実習指導者としての教員にこの立場や価値観を学生と共有し、

気さくに話ができるような雰囲気づくりに努めました。

次は、学生の自己紹介です。

学生の自己紹介においても、チームビルディングを意識します。

チームビルディングとは

メンバーの能力や経験を最大限に引き出し、高いパフォーマンスを上げるチームを作ることです。

今回の実習目標は、看護の対象を理解し、看護の実際を知るです。

実習グループ全員の能力や経験を最大限に引き出し、チーム全員が看護の対象を理解し、看護の実際を知らなければいけません。

学生一人ひとりに自己紹介してもらう。

グループ内で学生個々の経験や価値観を共有する重要性

看護学校に入学し、学籍番号順に席が決められていて、その周囲の子と仲良くなった。

ある講義のグループワークで、教員がグループメンバーを決めた。そのメンバーのうち一人の子と仲良くなった。

そんな経験、皆さんにはありませんか。

そして、仲良くなった子とは、親密にいろいろなことを話すけど、

クラスのほとんどの子とは、挨拶程度で、当たり障りなく話す程度。

そんなこと、ありませんか。

学校内で過ごす分には、さほど困らず、それでいいのですが。

看護実習に行くと、今まで生きてきた中で、考えたこともないような事を考えたり。

びっくりするようなことを患者さんに言われたり、経験します。

脱毛や嘔吐を繰り返しながら、「まだ生きていたい」と、化学療法を受けている癌患者さんを受け持ち、

生きることの意味を考え、コミュニケーションの難しさに泣いたり。

患者さんの生活や価値観、患者さんの尊厳について考えたり。

看護師になるということは、患者さんと向き合わなくてはならないのですが。

同時に、自分の生活や価値観、今まで生きてきた自分自身の人生を振り返ったり、

自分自身とも向き合うことにもなります。

患者さんのつらさ、悲しみ、不安、恐怖に触れたときに、

私自身、とても辛く、悲しくなりますし、どのように患者さんと接したらよいのか分からず、

誰かに相談したくなります。

でも、相談したくなった時。

実習グループメンバーとは、今まで挨拶しかしたことがない。

メンバーが、どんな性格で、どんなことが得意で、何が苦手か分からず。

メンバーの、価値観もわからない状況で、そのような重い相談ができるでしょうか。

とても難しいですよね。

なので、グループメンバー一人ひとりの好きな事、嫌いな事、得意な事、苦手な事、

今まで経験してきたこと、性格や価値観などを。

詳細に知る必要はないですが、グループメンバー全員で共有する必要があります。

教員にこだけが、実習グループ一人ひとりを把握している。

学生の実習リーダーだけが、みんなのことを把握している。ではなく。

メンバー間で、お互いのことを理解し合うことが、大切です。

患者さんのところに行ったら、

「今日は、吐き気が強いから、あまり来なくていいって言われた。」

何もできない私が側に行ったら、迷惑ってことかな・・・。

 

と、思ったときに、あなたなら、どんな人に声をかけますか。

  • とにかく、今の思いを聴いてほしい。気持ちがモヤモヤしていてスッキリしない。
  • 患者さんにとって、このまま何もしないのは良くないと思う。私の考えがあっているのか確認したい。
  • 私と一緒に解決策を考えて欲しい。1人では解決策が思いつかない。
  • 患者さんに言われたことがショック。1人でこの気持ちを抱えるのが辛い。

など、患者さんの言葉をどのように受けとめたかにもよりますが。

とにかく、物事を前向きに考えて、より良い方法に進めるようアドバイスしてくれるメンバーもいれば、

じっぐりと友人の話を聴き、友人の気持ちに寄り添おうとするメンバーもいるかもしれません。

また、悩んでいる人の話を聴き、論理的に物事の本質を整理しようとするメンバーや、

過去の自分の体験を通して、アドバイスしてくれるメンバーもいるかもしれません。

グループのメンバー一人ひとりが、「どんな特徴を持った人なのか」「得意なことや不得意なことは何か」などを共有すると、

グループ内での関係を作りやすくなり、信頼関係の構築につながっていきます。

そして、何か困ったことや不安な事、相談したいことがあった時に、

今の自分の状況にあった、頼りやすいメンバーに声をかけることができるのではないでしょうか。

チームビルディングのメリット

チームビルディングを行うことで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。
主な3つのメリットをご紹介します。

メンバーの実習への意欲が高まる

メンバー同士の信頼関係を築くことで、実習へのモチベーションが向上します。

皆さんも感じたことがあるかもしれませんが、実習する上での(働く上での)人間関係は非常に重要です。

人間関係が良好で、和気あいあいとした雰囲気があるチームでは、

メンバーが前向きに実習(仕事)に取り組むことができます。

グループとしての実行性可能性や問題解決能力の向上

メンバーのモチベーションが向上することで、成果にもつながりやすくなります。

例えば、グループ内のコミュニケーションが円滑になり、情報共有がしやすくなることで、

一人ひとりの実行可能性がアップします。

実行可能性とは、実際に行動に移すことができる可能性です。

逆に、「こんなこと言ってもいいのかな?」という遠慮や不安があると、

「まあいいか」と自分の中に閉じこもることになり、

報告・連絡・相談の漏れが発生してしまいます。

また、メンバー同士のノウハウの共有などが活発になることで、

チーム内での問題解決能力の向上などが見込まれます。

午後に足浴をする時は、お昼休みから戻ったらすぐ、看護助手さんにワゴンを使う時間を伝えておいた方がいいよ。

助手さん、午後になると物品を材料室にとりに行ったり、薬剤を取りに行くのに、ワゴンを使うんだって。

など、ちょっとしたノウハウかもしれませんが、重要な情報ですよね。

新たなアイデアが生まれやすくなる

コミュニケーションがスムーズに取れることにより、

新しいアイデアが出やすくなります。

メンバー同士の関係性が深まることで、「あの人の力を借りたら、こんなことも実現できそう」

といった相乗効果も期待できます。

グループでの話し合いが前向きになり、実習が楽しくなります。

学生の自己紹介の実際

実際に、自己紹介をする時は、その場で、学生に負担がかからないような内容で、

楽しい雰囲気の中で行えるよう、配慮します。

自己紹介の内容は、以下の4項目ぐらいが妥当かな、と思っています。

  1. 出身
  2. 好きなこと・得意なこと
  3. 自分を漢字1字であらわすと
  4. 頑張りたいこと

1人2~3分ぐらいで自己紹介します。

自己紹介の順番は、学生に決めてもらってもいいし、教員が指示してもいいと思います。

「好きなこと・得意なこと」や、「自分を漢字1字であらわす」と、を聞くと、

メンバーの強みなどが把握しやすく、どんな時に頼りになりそうか、相談できそうか、

判断しやすくなります。

また、自己紹介をして、自分の強みや頑張りたいことを伝えることで、

協力を得やすくなり、実習も進めやすくなります。

教員にこ
教員にこ

先生は、漢字一文字であらわすと

「炎」かな。

情熱的とか、熱いってよく言われます。(笑)

まとめ

学生は実習に対する不安と緊張が強い反面、看護師らしい学習が始まる看護実習に、期待する気持ちもあります。

実習が始まると、知識や技術が未熟な学生は、実習の様々な場面で自信を無くすことがあるのですが、

それは、当たり前で仕方のないことです。初学者ですから。

でも、教員や看護師さん、指導者さんから、学生のためを思った指導を受けたとしても。

「さっき、オムツ交換の手際が悪かったよ。練習しようね。」

「もっと積極的にコミュニケーションをはかってごらん。」

「緊張していて、問診の内容が足りなかったよ。」などと、

できなかったこと、弱みや欠点を指摘され続けると、

「私は、なぜこんなにできないのだろう。」と、自己嫌悪に陥ります。

そして、教員や指導者さんに声をかけるのが怖くなったり、患者さんに関わるのが怖くなったり、

実習が嫌いになってしまいます。

自己紹介で、好きなこと・得意なことや頑張りたいことに視点を当てたのは、

グループメンバー全員が、お互いにできないことを指摘し合うのではなく。

お互いの好きなこと・得意なことを活かして、患者さんやメンバーのために実習を頑張り、

「ありがとう。」と感謝されたり、実習メンバー全員の学びが深まった方が、

私にもできることがある。また頑張ろう。と前向きに頑張れると思うからです。

自分の得意を活かして率先して行動したり、お互いのサポートをしたりすることが、

看護チームにも必要なことだと、私は思います。

教員もグループの一員であることや、学生の味方であることを理解してもらい。

学生一人ひとり、そしてグループが看護チームとして成長できるように関わっていきたいものです。

また、出来ていないことは指摘しやすいのですが。

できていることを認めて、それを大事に育てていく関わりの方が、長い目で見たときに、

学生の成長につながっていると考えます。

その場、その時にしかできない「できていなかった」指導もありますが、

「できていたこと」の指導も同じくらい、それ以上にしていきたいですね。

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